みにまるなひげ

引っ越しの多いミニマリスト漫画家のブログ。

【読書】美徳と悪徳の闘い。小説「肩をすくめるアトラス」。

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ビジネス書のベストセラー「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」の中で、

アイン・ランド(ロシア系アメリカ人の小説家。代表作「肩をすくめるアトラス」は多くの偉大なビジネスマンが愛読しているといわれる)を引用しないCEOの話というのは、なんともすがすがしい。

と、ちらりと紹介されていた小説「肩をすくめるアトラス」。

「聖書に次いでアメリカ人が最も大きな影響を受けた本」とされているそうで、「そんなにすごいのか…!」と、気になって読んでみました。

有能な頭脳労働者vs無能なたかり屋、美徳vs悪徳の闘い。

舞台はアメリカ。インターネットや携帯電話はまだなく、機関車が走っていた頃の物語です。(この本の刊行が1957年なので、そのあたりか、それより少し前のアメリカという印象です)

「最高の物を作りたい」という純粋な気持ちから真面目に真っ直ぐにひたむきにビジネスや製品を生み出していく、主人公たち「頭脳労働者」 。

そんな彼らの有能さと名誉と資産に嫉妬して、彼らの失敗を願い、とことん足を引っ張り、政治すら味方につけて奪えるだけ奪おうとする「たかり屋」。

そのたかり屋に散々むしり取られていった結果、ついにキレた頭脳労働者たちが反旗をひるがえす――。

「有能」と「無能」、「美徳」と「悪徳」の闘いを描いた小説です。

「真の有能」とは。「真の美徳」とは。いままでの自分の価値観をガンガン揺さぶられます。

頭脳労働者たちの逆襲の仕方も気持ち良いです。

想像よりも読みやすく、あるあるの人間描写がおもしろい。

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■上は一般的な文庫、下が「アトラス」。字がちっちゃい!

ビジネス書で取り上げられていて、その上多くのCEOが読んでるとなると、つい「むずかしい用語がいっぱい出てくる経済小説」なのかな、と想像していた私。

しかも普段読み慣れた文庫よりも文字が小さくて、さらには全3冊の各巻が500ページ超えというぶ厚さなので、ちょっとひるんでしまったのですが。
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■左は約300ページの文庫、右が「アトラス」。分厚い…!

読み始めてみると、資本経済とはなんたるか…といった専門的な難しい話ではなく、濃い人間ドラマでした。

傲慢な妻、無能なのに偉そうな弟、保身のために魂を売った科学者などなど、いろんな悪徳キャラクターが出てくるのですが、中には「こういう人いるなあ」と身に覚えのあるキャラクターもいて、気がつくと感情移入。

いままで理解不能だった、現実の嫌なあの人やこの人の言動の動機と目的が、物語の中で明快に説明されていて、スッキリします。

主人公たちと一緒に腹を立てながら、先が気になって夢中で読めました。

グッときた言葉。

「一方が利益をえてもう一方が損をする取引は詐欺よ」
第1部より

 

「人殺しよりも卑劣な邪悪は自殺が美徳行為だと人に思いこませることだ。生贄のかまどに人を投げ込むよりも卑劣な悪は、彼自身の意思によってそこに飛び込ませ、そのうえ彼にかまどを作らせることです。かれら自身の主張によれば、あなたを必要とし、何の見返りも差し出せないのは”かれら”なのです。かれらの主張によれば、かれらはあなたなしでは生きていけないからあなたはかれらを支えなければならない」

 

「自分のたのしみをあきらめるようにいわれて不服を唱えるのを人は恥じることになってはいませんか?」

 

「あなたはもっとも危険な競争相手になりうる人物を訓練しているんじゃない?」
「雇いたいのはそういう人間だけだよ。ダグニー、きみはたかり屋の中に長くいすぎたのか?一人の能力が別の人間への脅威だと考えるようになってしまったのか? ~(中略)~ 最高の能力をもつ人間を見つけて雇うことを恐れる者はみな、畑違いのビジネスに首をつっこんだ詐欺だ。僕にとって、犯罪者よりも見下げ果てたこの世でもっとも卑劣な人間は、優秀すぎるからといって人を拒絶する雇い主だ」

自分は”どちら側”なのか。考えさせられる小説でした。

主人公たちの有能さに嫉妬して、何度も何度も陥れてくる敵たち。

主人公サイドを応援しながら読んでいるので、そんな敵たちがぎゃふんと言わされていくシーンを読むたびスカッとしてしまうのですが。

敵とはいえ、「いい気味だ!」と思ってしまう私もまた、敵側の思考(悪徳)に陥ってるのかも…と、混乱する場面が多々ありました。

主人公サイドが白で、敵サイドが黒なら、自分は半端なグレーになってしまってるなと、ゴールトやダンコニアの語りを聞きながら、自分の信念や道徳観を見直すという、考えさせられる小説でした。

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