みにまるなひげ

引っ越しの多いミニマリスト漫画家「ひげ羽扇」のブログ。


【読書メモと感想】地球温暖化の原因第1位は日々の食事。「ドローダウン 地球温暖化を逆転させる100の方法」。

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2020年発行の実用書「DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法」(ポール・ホーケン編著/江守正多 監訳/東出顕子 訳/山と溪谷社)を読みました。

ニューヨークタイムズベストセラーにもなっている本書では、地球温暖化を逆転させるための100の解決策について、

・エネルギー
・食
・女性と女児
・建物と都市
・土地利用
・輸送
・資材

の7分野に分け、効果的なランキング順位と合わせて紹介されています。

また、巻末には、100の解決策に加えて、

・今後注目の解決策(生まれたばかり、あるいは実現の日が近い20の解決策)

の紹介もあります。

“ドローダウン“とは大気の用語で、「温室効果ガスがピークに達し、年々減少しはじめる時点」を指すとのこと。

現在、20カ国70人の科学者と120人のアドバイザーが集まり、地球温暖化対策の研究・調査がなされています。

このプロジェクト・ドローダウンの目標は、100の確実な解決策を特定、評価、モデル化して、ドローダウンを目指して30年でどれくらいのことを達成できそうかはっきりさせること。

ニュースや報道は私たちが行動しなければどうなるかに焦点を当てるので、私たちはつい気候の未来は厳しいと考えてしまいます。

『ドローダウン』の焦点は、私たちに何ができるかにあります。(9ページ/序文より)

 

著者が序文で語っているとおり、自分個人でも取り組める対策も多く掲載されています。

興味深かった部分の読書メモと感想をまとめました。

温暖化を逆転させる方法TOP10。

1位:冷媒
2位:風力発電(陸上)
3位:食料廃棄の削減
4位:植物性食品を中心にした食生活
5位:熱帯林
6位:女児の教育機会
7位:家族計画
8位:ソーラーファーム
9位:シルボパスチャー(林間放牧)
10位:屋上ソーラー

 

外食で食事を残さないようにしたり、冷蔵庫の食材を腐らせないように気をつけたり、肉食を減らしたりなど、自分でも今日から始められるものがランクインしています。

食事関連のことは温暖化対策としてだけでなく節約や健康にも良いので、うれしい驚きです。

地球温暖化は私たちの“ため”に起きている。

地球温暖化は私たち“”起きていること、私たちは先人の行動によって定められた運命の犠牲者なのだとつい思いたくなります。

わずかに言い方を変えて、地球温暖化は私たちの“ために“起きていると考えてみたら、つまり、大気の異変は私たちが何をつくり、どう行動するかすべてを変えなさい、再考しなさいというメッセージなのだと考えてみたら、生きる世界が違ってきます。

私たちは100%の責任を引き受け、誰かを責めるのをやめます。私たちは地球温暖化を避けがたいことだとは見ていません。むしろ、建設的になり、革新し、変化を起こすようにという招き、創造性、思いやり、才能を目覚めさせる道への招きだと見ています。(14ページ/「はじまり」より)

 

問題をポジティブに考えるかネガティブにとらえるかは「気の持ちよう次第」。この考え方、好きです。

原発が発電しているのは世界の電気の約11%。

現在、原子力は世界の電気の約11%を発電し、世界の総エネルギー供給の約4.8%に寄与しています。

30カ国に440基以上の稼働中の原子炉があり、さらに60基が建設中です。

稼働中の原子力発電所を保有する30カ国のうち、電気エネルギー供給に占める原子力の割合が最も高いのはフランスで、70%以上です。(50ページ)


11%って想像以上に少なくてびっくりです。てっきり世界の50%くらいはカバーできてるんだと思ってました。

そんな原子力の順位は20位。上位のほうではありますが、リスクを考えると効率はあまりよくなさそうに感じます。

本書で提示される100の解決策のうち、ほぼすべてが「社会が追求すべき何ら後悔のない解決策」と紹介されている中、原子力は例外的に「悔いの残る恐れのある解決策」と書かれています。

原発のコストは40年前に比べて4〜8倍になっている。

原子力エネルギーの将来を予測するのを難しくしているのは、そのコストです。原子力以外のほぼすべての形態のエネルギーは時間がたつにつれてコストが下がってきましたが、原子力発電所のコストは40年前の4〜8倍になっています。

米国エネルギー省によれば、先進原子力は、比較的効率の悪い従来のガスタービンを除けば、エネルギー形態として最も高額です。陸上風力のコストは原子力の4分の1です。(51ページ)

 

このコストについては、元東電社員の医師、小野俊一さんの著書でも語られています。

 

(危険で廃棄物の処理も大変で発電単価が最も高い原発を電力会社が推進する本当の理由は、「総括原価方式」という利益計算方法にある)

通常の会社は、

(利益)=(収入)ー(必要経費)

電力会社の利益計算はまったく異なります。

(利益)=(必要経費)×3パーセント

(中略)すなわち、必要経費をかければかけるほど、利益が増える…まるで打ち出の小槌のような話です。

(買い物代金を第三者が払ってくれる上に、3%のポイントまでもらえる状態。自分もお店も卸業者も喜び、損してるのは第三者だけ。この場合の第三者とは電力使用者)

(小野俊一 著「フクシマの真実と内部被曝: 元東電原発技術者・内科医が語る」より)


「40年前の4〜8倍のコスト」が本当に必要なコストなのか、というのも気になるところです。

石炭火力発電や原発の発電効率は約34%。

米国の石炭火力発電所や原子力発電所の、発電効率は約34%です。つまり、エネルギーの3分の2が煙突を昇り、空を暖めています。結局、米国の発電部門は日本のエネルギー予算全体に相当する熱量を捨てているのです。(55ページ)

 

てっきり、原発は危険と隣り合わせなぶん、かなり発電効率が良いんだと思っていたので、これにも驚きです。

科学が発達してるように感じる現在でも「無駄なく発電する」って実現が難しい技術なんですね。

無駄がなければ不足なし。

メタンガスを発見したアレッサンドロ・ボルタがガスの燃焼実験をしていた頃、流行った格言。

 

「Waste not, want not」(無駄がなければ不足なし)(65ページ)

私たちの食事は地球温暖化の原因の第1位。

地球温暖化の原因というと、おそらく化石燃料エネルギーが思い浮かぶでしょう。朝、昼、晩の食事が温暖化にもたらす結果にはなかなか目が向きません。

(中略)農業から森林伐採、食料廃棄まで、すべての食料関連と家畜の排出量とを合わせると、私たちが食べるものは、エネルギー供給分野と並んで地球温暖化の原因の第1位になります。(81ページ)

菜食中心の食生活は地球温暖化対策になる。

仏陀、孔子、ピタゴラス。レオナルド・ダ・ヴィンチとレフ・トルストイ。ガンディーとガウディ。パーシー・ビッシュ・シェリーとジョージ・バーナード・ショー。

植物性食品を中心にした食事を支持する著名人は昔からたくさんいました。

(中略)菜食中心の食生活に移行することは、私たち需要者側にできる地球温暖化対策です。(82ページ)

 

これほど大きな意義のある気候変動の解決策で個人の手中にあるもの、夕食の皿ほど身近なものはまずありません。(86ページ)

 

「植物性食品を中心にした食事」は4位です。

正直、エネルギー問題って個人ではどう取り組めばいいかわからなくて、とりあえず夏冬のエアコンの温度設定に気をつけるくらいしかできなかったりしますが、食事の量や内容なら、健康も兼ねていつでも気軽に取り組めるのでいいですね。

家畜の牛を一国とすると、世界第3位の温室効果ガス排出国になる。

最も控えめな推計でも、家畜の飼育は毎年排出される世界全体の温室効果ガスの15%近くを占めます。〜家畜の牛を一国とすれば、世界第3位の温室効果ガス排出国になります。(82ページ)

肉食を減らした場合のタンパク質摂取について。

植物性タンパク質が豊富であれば、人間は栄養のために動物性タンパク質を摂る必要はなく(厳格な完全菜食主義、ビーガンの場合のビタミンB12を除く)、むしろ動物性タンパク質の撮りすぎは、癌、脳卒中、心臓病になるリスクを高めます。疾病率と医療費の増加はワンセットです。

(中略)世界保健機関(WHO)によると、1日のカロリーのうちタンパク質由来10〜15%だけでよく、その基準は植物性食品を中心にした食事で十分に満たせます。

(中略)2016年、オックスフォード大学は画期的な研究を行ないました。今から2050年までの間に世界規模で植物性食品を中心にした食事へ移行した場合、気候、健康、経済にどれだけ有益かをモデル化したのです。

現状のままの食料由来の排出量は、ビーガン(完全菜食)で70%、ベジタリアン(チーズ、牛乳、卵は食べる)で63%削減できる可能性があるという結果になりました。(82ページ)

 

ベジタリアンとは言わないまでも、「リデュースタリアン」(Reducetarian/肉食減量主義)を推進することはもちろん、肉を基本食材ではなく、「たまのごちそう」として見直すことも必要です。(85ページ)

 

最近やっと「ビーガン」と「ベジタリアン」の違いを知ったのですが、「リデュースタリアン」というのもあるんですね。

食べたいものを我慢しすぎると反動が来ると思うので、無理のない程度にゆるく始められる「肉食減量」は取り組みやすくて良さそうです。

高所得国では最大35%の食料が消費者によって捨てられている。

育てるか加工した食料の3分の1は農場や工場から食卓へたどりつきません。(89ページ)

 

高所得国では最大35%の食料が消費者によって廃棄されていることがわかります。(91ページ)

 

「食料廃棄の削減」は3位。「植物性食品を中心にした食事」よりもさらに上位です。

農薬や肥料を使わない、耕さない農法。

栄養状態のよい植物は害虫に強くなり、肥料がほとんど必要ないか、まったく不要なところまで土壌肥沃度が向上します。

(中略)収穫後の作物残渣に被覆作物の種子をまくと、被覆作物が雑草を押しのけて成長し、下層の土を肥やし、耕作に適した状態にします。

通常の被覆作物は、たとえばベッチ、シロツメクサ、ライ麦です。一度にこれらを組み合わせることもあります。

実験の結果、環境再生型農業では10〜25種類を組み合わせて被覆作物を植えると、それぞれが土に特定の質や養分を与えることがわかりました。(114ページ)

 

長い間、農薬や化学肥料なしでは世界を養っていけないというのが通念でした。しかし、米国農務省(USDA)は今、土を耕すことと農薬・化学肥料を控える農法を試行しています。(115ページ)

 

土壌細菌が硝酸肥料を分解することによって発生する亜酸化窒素は、二酸化炭素の298倍も強力な温室効果ガスです。(116ページ)

 

「環境再生型農業」は11位。「耕す必要もない」というのは目からウロコです。

「栄養状態のよい植物は肥料が必要ないほど害虫に強い」という話は、無農薬・無肥料の“奇跡のりんご”を栽培していることで有名な農家、木村秋則さんも語っています。

自然のままの環境で育った野菜や植物は、時間がたっても、腐るのではなくただ枯れるだけ。だから変な臭いもしません。
(木村秋則、鍵山秀三郎 共著「目に見えないけれど、人生でいちばん大切なこと」より)


自然栽培の野菜は買うとなるとまだまだ高いですが、温暖化対策もあいまって無農薬・無肥料が今後当たり前になると、日常買いしやすくなりそう。期待大です。

持続可能性がほしいなら、予算からゼロを2つ削る。

1971年、ブラジルのクリチバの市長になった若い建築家、ジャイメ・レルネルの言葉が引用されています。

 

「創造性がほしいなら、予算からゼロを1つ削りなさい。持続可能性がほしいなら、ゼロを2つ削るのです!」(252ページ)

感想:フルカラーで写真も多く、目も楽しめる一冊です。

100あると、自分にとって身近ではない内容もあるので、そうした項目は流し読みしつつ読みました。取り上げられている分野が幅広いので、読む人によって興味がわく対策も全然違いそうです。

二酸化炭素だけでなく、亜酸化窒素(農業)とメタン(畜産)、フロンといった他の温室効果ガスにも触れられているのも良かったです。

本書のおかげで正すことができた思い違いがひとつ。

以前、大規模のソーラーパネル上空で鳥が焼け死んでしまう話を聞いたことがあり、てっきり「一般家庭の屋根についてるような太陽光パネルが砂漠のような広大な場所に大量に集まったらそういう被害が出てしまうんだな」と思っていたのですが、私が思い浮かべてるそれは「太陽発電用」のソーラーパネルで、鳥に被害が出るのは「集光型太陽発電」のパネルの方でした。別物なんですね。

TOP10以外の方法では、「ネット・ゼロ・ビルディング」という、エネルギー消費がプラマイゼロの建物が「いいな」と感じました。

そして「スマートガラス」も。カーテンやブラインドがいらなくなったり、暑い日の冷房負荷が30%以上低減できそうだったり。持ち物が減らせて、電気代も自然と節約できて、それが自然に地球のためになってるなんて理想的です。

個人でできそうなのは、やはり「植物性食品を中心にした食生活」「食料廃棄の削減」「ソーラー(太陽光)の利用」といったところでしょうか。

災害や停電時対策の意味でも太陽光発電には興味があります。食事は、菜食中心にすると、調理時に生肉を触らなくて良くなるので洗い物が楽になるな、と考えたりも。さらに食事量を減らせば、ゴミも食料生産量も減らせる上に自分の免疫力も上がるという良コンボ。

温暖化という一方で、寒冷化の可能性を指摘する研究もあったりして、個人的には真ん中視点で見ていたりもするのですが、どちらにしても、この100の方法によって、結果地球の自然がよみがえれば素敵です。

厚めの本ですが、1項目ごとのページ数は3ページ前後。全編フルカラーで写真も多いのでイメージが湧きやすく、読書の息抜きにその綺麗な写真を眺めるだけでも楽しめる1冊です。

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