みにまるなひげ

引っ越しの多いミニマリスト漫画家「ひげ羽扇」のブログ。


【読書】賢い人ほど世界の見方を間違えている。「ファクトフルネス」で知る世界の真実【メモと感想】

f:id:higeusen:20200706174756j:image

2019年発行の教養書「FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」(ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド著/上杉周作、関美和 訳/日経BP 刊)を読みました。

著者ハンス・ロスリング氏はスウェーデン出身の医師、公衆衛生の専門家です。

あるとき、一般市民から高学歴の専門家までが、世界についての基本的な問題に正しく答えられないことに気づいた著者。

それから何年もの間、事実に基づく世界の見方を人々に教えながら、目の前の事実を誤認する人を観察し、そこから学んだことを一冊にまとめたのがこの本です。

世界を正しく理解できない原因である「10の本能」と、その本能の抑えかたについて、シンプルなグラフと体験談を交えながら、わかりやすく書かれています。

判断力が上がり、取り越し苦労しなくてすみ、世界をありのままに正しく見られるようになる。

世界が想像とはまったく違っていること、解決不可能に見えた世界の課題がすでに解決していることがわかる。(本書より)


数字やグラフが苦手な私にも読みやすく、本書のおかげで世界の見方が良い方向に変わりました。2020年に読んだ本の中でTOP5に入る良書です。

読書メモと感想をまとめました。

世界の事実に関する13問のクイズの平均正解数はたった2問。

f:id:higeusen:20200706174752j:image

本書の冒頭には、私たちがどれほど世界のことを知っているかを試す、「世界の事実に関する13問の3択クイズ」が掲載されています。

すべて当てずっぽうに答えた場合、正解率は33%に近くなるため、(正解率の高い地球温暖化の質問をのぞけば)12問中だいたい4問は正解するはずとのこと。

 

2017年に14ヵ国・1万2000人に行ったオンライン調査では、地球温暖化の質問をのぞけば、平均正解数は12問中たったの2問。

全問正解者はおらず、スウェーデンの参加者ひとりが唯一、12問中11問正解した。全問不正解だった人は、なんと15%もいた。

 

私も、自信を持って正解できたのは13問中2問だけでした。当てずっぽう以下です…。

 

(中略)このクイズは、さまざまな国の、さまざまな分野で活躍する人々に実施してきた。

医学生、教師、大学教授、著名な科学者、投資銀行のエリート、多国籍企業の役員、ジャーナリスト、活動家、そして政界のトップまで。間違いなく、高学歴で国際問題に興味がある人たちだ。

しかし、このグループでさえも、大多数がほとんどの質問に間違っていた。一般人の平均スコアを下回り、とんでもなく低い点数をとったノーベル賞受賞者や医療研究者もいた。

(中略)何も知らないというより、みんなが同じ勘違いをしているといったほうが近いかもしれない。 (16ページ)

 

また、3択のうち不正解の選択肢が2つありますが、「当てずっぽうの場合、どちらも同じ確率で選ぶ」とのこと。

ですが人間は、不正解の2つのうち、よりドラマチックなほうを選ぶ傾向が見られるそうです。多くの人は、「世界は実際よりも怖く、暴力的で、残酷だと考えているようだ」、と著者は語ります。

貧困は増え続け、天然資源ももうすぐ尽きる?

あなたは、次のような先入観を持っていないだろうか。

「世界では戦争、暴力、自然災害、人災、腐敗が絶えず、どんどん物騒になっている。金持ちはより一層金持ちになり、貧乏人はより一層貧乏になり、貧困は増え続ける一方だ。何もしなければ天然資源ももうすぐ尽きてしまう」

(中略)わたしはこれを「ドラマチックすぎる世界の見方」と呼んでいる。精神衛生上よくないし、そもそも正しくない。 (20ページ)

 

「ドラマチックすぎる世界の見方」をしてしまうのは、知識不足やメディアのせいではなく、原因は脳の機能にあるのだそうです。

2つのグループに分けたがる「分断本能」。 

人は誰しも、さまざまな物事や人々を2つのグループに分けないと気がすまないものだ。

そして、その2つのグループのあいだには、決して埋まることのない溝があるはずだと思い込む。これが分断本能だ。

世界の国々や人々が「金持ちグループ」と「貧乏グループ」に分断されているという思い込みも、分断本能のなせるわざだ。(30ページ)

 
例として、1965年時点で途上国とされていた国は125か国あったところ、2017年ではたった13カ国にまで減っていることが挙げられています。

2017年の世界の全人口の割合は、

・85%が1965年に先進国と呼ばれていた枠に入っており、
・残り15%のほとんどは2つの枠の間。
・いまだ途上国の枠にいるのは全人口6%

とのこと。 

「世界の人口の何%が、低所得国に住んでいると思いますか?」

低所得国の平均寿命は62歳だ。多くの人は食べ物に困らないし、多くの人はある程度安全な水道水を飲めるし、多くの子供はワクチンを接種するし、多くの女の子は小学校を卒業する。

(中略)大多数の人は「最悪の状況」を示す回答を選んでいた。 

(中略)「世界の人口の何%が、低所得国に住んでいると思いますか?」

この質問で最も多かった答えは「50%以上」で、平均回答は59%だった。

正しい答えは「9%」だ。(中略)そしてついさっき、低所得国の暮らしは人々が想像するほど酷くないことを証明したばかりだ。(40ページ)

4つの所得レベル。

f:id:higeusen:20200706174801j:image
▲参照:「ファクトフルネス」表紙の折り返しより。世界各国2017年の平均所得と平均寿命を表したチャート。上に行くほど健康で、右に行くほど金持ち。

 

4つの所得レベル(所得ごとの世界の人口分布2017年。●は10億人を表す)を使うだけで、テロから性教育まで、世界についてさまざまなことを理解できるようになる。レベル1が最も難しい。(1日1ドルからスタート)

ひとりあたりの1日あたりの所得(USドル)。 

レベル1(2ドルまで)●
レベル2(8ドルまで)●●●
レベル3(32ドルまで)●●
レベル4     ●

(45ページ)

 

たとえば移動手段について、レベル1は裸足、レベル2は自転車、レベル3はバイク、レベル4は車、と生活水準が上がっていきます。

本書では他に、水の調達方法や料理の内容、ベッドの質などもこの所得レベル別で表されています。日本はレベル4です。

「極度の貧困」と「相対的貧困」。

あなたの国のいわゆる「貧困」は「極度の貧困」ではなく、「相対的貧困」だ。たとえばアメリカだと、レベル3の暮らしをしていても貧困層と呼ばれる。(57ページ)

 実際には「分断」はない。

ファクトフルネスとは……話の中の「分断」を示す言葉に気づくこと。(中略)多くの場合、実際には分断はなく、誰もいないと思われていた中間部分に大半の人がいる。

分断本能を抑えるには、大半の人がどこにいるか探すこと。(59ページ)

数値の差が10%程度以下なら慎重になるべき。 

統計を読み解く際には、「数値の差が10%程度かそれ以下である場合、その差を基になんらかの結論を出すことには慎重になるべき」と覚えておこう。(64ページ)

「極度の貧困」が半減した事実を知っていた人は10%未満。 

過去20年のあいだ、極度の貧困にある人の数は半減した。だが、わたしたちがオンライン調査を実施したところ、この事実を知っていた人の割合は、ほとんどの国で10%未満だった。

(中略)1800年頃は、人類の約85%が極度の貧困層、すなわちレベル1の暮らしをしていた。世界中で食料が不足しており、ほとんどの人が、年に何度もお腹を空かせて眠りについた。イギリス国内や植民地では児童労働があたりまえで、子供たちが働き始める平均年齢は10歳だった。

(中略)人類は全員レベル1からスタートし、1966年まで、大半の人はレベル1で暮らしていた。極度の貧困は「例外」ではなく「あたりまえ」だった。

(中略)直近20年を見てみると、人類史上、最も速いスピードで、極度の貧困が減ってきたのがわかる。 (67ページ)

 

20年前(1997年)と比べて、

・インドでは2億7000万人、
・中国では約5億人、
・中南米では3500万人

が極度の貧困を脱したとのこと。

 (中略)極度の貧困の中で暮らす人々の割合は、20年前には世界の人口の29%だったが、現在は9%まで下がった。ほとんどの人が地獄から脱出したということだ。

 悪いニュースが広まりやすくなった結果。

「報道がより自由になり、技術が進歩するにつれ、悪いニュースは以前にも増してすぐに広まるようになった」と著者は言います。

(中略)暮らしが良くなるにつれ、悪事や災いに対する監視の目も厳しくなった。昔に比べたら大きな進歩だ。

しかし監視の目が厳しくなったことで、悪いニュースがより目につくようになり、皮肉なことに「世界は全然進歩していない」と思う人が増えてしまった。(86ページ)

「悪い」と「良くなっている」は両立する。 

世界のいまを理解するには、「悪い」と「良くなっている」が両立することを忘れないようにしよう。(90ページ)

 

今が悪い状況に見えていても、良くなる過程の場合もある、と著者は語っています。 

「世界の人口は増え続ける」という思い込み。

現在の世界人口は約76億人。そしてご存知の通り、人口は猛スピードで増え続けている。

しかし、人口が増えるスピードはすでに緩やかになりつつあり、これから数十年間は減速する見込みだ。

世紀末を迎える頃にはグラフが横ばいになり、人口は100億人から120億人で安定すると見られている。(106ページ)

「直線のグラフ」のほうが珍しい。

「何かの現象をきちんと理解するために、グラフの形をきちんと知ろう」と著者はすすめています。そして、「グラフで示されていない部分がどうなっているかを、不用意に憶測しないこと」、とも。

 

実際には、直線のグラフのほうがめずらしいことを覚えておくこと。

(中略)多くのデータは直線ではなく、S字カーブ、すべり台の形、コブの形、あるいは倍増する線のほうが当てはまる。(127ページ)

 

つい、グラフは直線状に伸びて続いていくと思いがちですが、「子供の身長が右肩上がりに伸び続けたら数メートルになってしまう」と想像してみると、バカらしい考えだとわかるはず、とのこと。

人口増加を止める確実な方法。 

極度の貧困に暮らす家庭は、たくさんの子供がいないとやっていけない。

子供は労働力としても必要だし、病気で命を落としやすいぶん、多めに子供をつくらないといけない。

 

「女性ひとりあたりの子供の数が5人から8人と最も多い国」=「乳幼児死亡率が最も高い国々」なのだそうです。

 

(中略)子供の死亡率が下がり、児童労働が必要なくなり、女性が教育を受け、避妊について学び、避妊具を入手できるようになれば、状況は一変する。

国や文化にかかわらず、男性も女性も子供の数を減らし、そのぶん子供に良い教育を受けさせたいと考えるようになる。

(中略)人口増を止める確実な方法はひとつしかない。極度の貧困を無くし、教育と避妊具を広めることだ。

いま、多くの親たちは、自らの判断で子供の数を減らしている。この傾向は世界中で見られるが、子供の数が減る前に必ず、子供の死亡率も下がっている。(115ページ)

 

少子化の日本も、確かに当てはまります。 

自然災害による死亡者が増えている?

自然災害による死亡者数は、100年前と比べて半分どころか、25%になった。

一方、人口は同じ期間に50億人増えている。ひとりあたりに換算すると、災害による死亡率は激減し、100年前の6%になった。 


その理由は、自然環境が変わったからでなく、ほとんどの人がレベル1から脱出したため。

被害の規模は国の所得レベルによって大きく異なるそうです。「懐が豊かでないと、災害に備えにくくなるから」とのこと。

「量」ではなく「割合」、「全体」ではなく「ひとりあたり」で考える。

中国とインドが、地球温暖化の犯人であるかのように扱われているのは、わたしも正気の沙汰ではないと思っていた。

そもそも、“国全体”の二酸化炭素排出量を見ているのが間違っている。「肥満の問題は、アメリカよりも中国のほうが深刻だ。中国人全員の体重を合計したら、アメリカ人全員の体重の合計より重いからだ」と言っているようなものだ。

人口は国によって千差万別なのだから、国全体の二酸化炭素排出量を比べるのは不毛だ。もしそんな論理がまかり通るのであれば、人口500万人しかいないノルウェーは、国民ひとりがどれだけ二酸化炭素を排出しても、大目に見てもらえることになる。

つまり、「国全体の二酸化炭素排出量」という大きな数字は、それを人口で割ることによって、比較可能な、意味のある数字になる。(182ページ)

 

数字を比較するときに大切なことは、

・量ではなく割合を見る
・全体の数でなくひとりあたりの数を見る

ことが大切だ、と著者は語ります。

 

ひとつしかない数字をニュースで見かけたときは、必ずこう問いかけてほしい。 

●この数字は、どの数字と比べるべきか?
●この数字は、1年前や10年前と比べたらどうなっているか?
●この数字は、似たような国や地域のものと比べたらどうなるか?
●この数字は、どの数字で割るべきか?
●この数字は、合計するとどうなるのか?
●この数字は、ひとりあたりだとどうなるのか?

できるだけ、量ではなく割合を計算しよう。その後で、数字が重要かどうか判断すればいい。 (184ページ)

世界の大半の人たちは貧しくて何も買えない?

世界の大半の人たちの生活レベルは、着実に上がっている。

レベル3の人口は、いまの20億人から2040年には40億人に増える。世界中のほぼすべての人が消費者になりつつある。

間違ったイメージにとらわれて、世界のほとんどの人は貧しすぎて何も買えないと思い込んでいると、史上最大のビジネスチャンスを見逃してしまう。

「西洋が一番進んでいる」という勘違い。

「先進国は進んでいて、発展途上国は遅れている」という勘違い示す例として、著者の体験談が語られています。

1972年、著者が医学部4年生のとき。インドの医学学校で学んだ最初の授業の話です。

 

何人かが手を上げた。インドの学生たちが、がんの診断方法や、通常どのようにがんが広がるか、適切な治療法はどれかを次々に説明していく。

そのまま30分ほど、インド人学生たちは、経験豊富な医師にしか答えられないような質問に答え続けていた。

わたしは恥ずかしくなった。きっと部屋を間違ってしまったのだろう。これが4年生の授業のはずはない。専門医の授業なんだ。インドの専門家の分析にわたしが付け加えられることは何もなかった。(198ページ)

 
しかし、これが間違いなく「4年生の授業」だと知った著者。
 

まさか。額にしるしをつけて、ヤシの木の下で暮らしている学生が、わたしよりはるかに知識豊富だなんて?

それから数日のあいだに、インドの教科書はわたしの教科書より3倍も分厚く、インド人学生がわたしより3倍も教科書を読み込んでいることがわかった。

(中略)西洋がいちばん進んでいて、そのほかの地域は西洋に追いつけないなんて、とんでもない勘違いだった。(198ページ)

「文化の違い」でなく「所得の違い」。 

世界中のレベル2の人たちはみんな、同じような方法で湯を沸かしている。つまり、所得の問題なのだ。

それに、中国でもそれ以外の国でも、違うやり方で湯を沸かす人たちがいる。それは文化の違いではなく所得の違いによるものだ。 

人の行動の理由を、国や文化や宗教のせいにする人がいたら、疑ってかかったほうがいい。(204ページ)

「過半数」の罠。

「過半数」とは半分より多いという意味でしかない。51%かもしれない。99%かもしれない。できれば、何%なのかを聞いたほうがいい。(206ページ)

変化は「ゆっくり」起こっている。 

いろいろなもの(人も、国も、宗教も、文化も)が変わらないように見えるのは、変化がゆっくりと少しずつ起きているからだと気づくこと。(236ページ)

世界の女性が受けている学校教育期間は短い?

女性の権利についての会議に招かれて講演した。ストックホルムで行われたこの会議には、292人の勇敢な若いフェミニストが世界中から集まった。みな、女性がもっといい教育を受けられるようにと考える人たちばかりだ。

それなのに、世界の30歳女性が受けている学校教育の期間は、同じ歳の男性より1年短いだけだと知っていたのは、わずか8%だった。(243ページ)

「複雑さ」も「違い」も「妥協」も受け入れる。

歴史を振り返ると、単純な理想論で残虐な行為を正当化した独裁者の例にはことかかない。複雑さを喜んで受け入れよう。違う考え方を組み合わせよう。妥協もいとわないでほしい。ケースバイケースで問題に取り組もう。(260ページ)

本当の悪者は誰? 

「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込みについて、著者がある体験を語っています。

医科大学での講義中、「大手製薬会社は、最も貧しい人たちがかかる病気について、まったくといっていいほど何の研究もしていない」と著者が説明していたときのこと。

学生のひとりが、「製薬会社の連中の顔に一発食らわしてやろうぜ」と発言しました。

ちょうど秋にスイスの巨大製薬会社ノバルティスで講演予定だった著者が、「誰の顔を狙ったらいいんだい?社員なら誰でもいいのかな?」と聞くと、「いちばん偉い奴じゃないと」と学生が答えます。

著者が当時のCEOの名を出すと、「いや、取締役全員に一発食らわせないと」と言う学生。

「そうすれば取締役会が研究方針を改めてくれるかな?」と著者が聞くと、「まさか」と別の学生が反応します。

「上場企業だから、方針を決めるのはCEOでも取締役会でもないでしょう。株主ですよね。取締役が方針を変えても、株主は別の取締役を選ぶだけですよ」。

ということは、社員も上司も取締役も悪くないってことになります。じゃあ株主は誰か。最初の学生の答えは、「金持ちですよね」。

 

「違う。製薬会社の株価はすごく安定しているからね。株式市場が上がったり下がったりしても、原油価格が動いても、製薬会社の株は底堅いんだ。

景気に連動する銘柄ならば、消費が増えたり減ったりすると株価も動くが、がん患者にはいつだって治療が必要だから製薬会社の株価はあまり変動しない。そんな安全な株を持ってるのは誰だろう?」

学生の目がわたしに集まる。その顔には大きなはてなマークが浮かんでいる。

「退職年金だよ」

シ〜ン。

「ってことは、一発食らわす相手がいないんだ。わたしは株主には会わないからねぇ。でも君たちなら会える。今週末はおばあちゃんの家に行って顔に一発食らわせてくるといいよ。誰かを罰したいなら、安定株を持ちたがる欲深なお年寄りを責めるといい」

「そうそう、君たちが去年の夏休みに貧乏旅行に出かけたとき、おばあちゃんにお小遣いをもらっただろ?ならそれも返したほうがいいな。おばあちゃんがノバルティスにそのカネを突っ返して、貧しい人たちの健康に投資しろって言えるからね。

あぁ、でももう使っちゃったのなら、自分の顔に一発食らわさないといけなくなるね」(262ページ)

 

本書でたくさん語られている著者の体験の中で、個人的に一番好きなエピソードです。

「世界は単純な二元論ではなかなか語れない」という「複雑さ」が良く伝わります。

感想:世界に対する誤解に気づかせてくれる名著。

2020年に購入したときの帯は40万部でしたが、そこから1年の間に100万部到達していてビックリ。でも充分納得できる一冊です。2022年の今でも書店で平積みされていて人気の様子。

本書は、単純にデータを調べたり論文を読んだりして書かれたものではなく、著者自身が世界中を旅する中で、いろんな国、いろんな宗教、いろんな所得の人と話した体験から得た知識がたくさん詰まっているため、説得力があります。

失敗談や赤っ恥体験などもあって、著者に親近感や人間味を感じながら読めるのも本書の魅力です。

37年生きてきて、まだ一度も海外旅行をしたことがない私。古い先入観でイメージしていた国や地域が確かにたくさんありました。

ずっと日本にいて、いわゆる「レベル4」の国が発信するニュースばかりを見ていたので、それ以外の国は昔からずっと「レベル1か2」のままだと勝手に思ってしまっていたのですが、この本を読むことでイメージがひっくり返りました。

「ニュースは不幸やトラブルを集めて不安をあおるもの」だと分かっていたつもりなのですが、この20年の間にこんなにも世界の色んな問題が改善されていたのは予想外でした。

「世界の見方」について書かれた本ではありますが、その「見方のコツ」は、人の見方や読書の仕方にも通じると感じます。

つい一方からの見方だけで判断してしまいがちですが、意識的に別の見方も試してみなければ、と考えさせられました。

「世界はどんどん悪くなっていくから対策が必要だ」といった悲観的な問題提起の本も多い中、根拠とともにその不安をなだめてくれ、前向きな気持ちにさせてくれる一冊です。

関連記事はこちら。

www.higeusen.com

www.higeusen.com

www.higeusen.com

www.higeusen.com

www.higeusen.com