埼玉県立近代美術館にて開催されている企画展、「辰野登恵子オン・ペーパーズ」を見に行ってきました。
辰野登恵子さんを知ったのはこれが初めて。
美術館ビギナーなので、とにかく「今やっている企画展を何か見よう!」と思い、足を運んだ次第です。
「辰野登恵子オン・ペーパーズ」企画展詳細。
これまでまとまった展覧の機会が限られていたという紙の仕事を中心に、油彩30点を含む約220点の作品が展示されています。
埼玉県立近代美術館での展示は2019年1月20日(日)までです。
開館時間は10:00~17:30(展示室への入場は17:00まで)。
休館日は月曜日(12/24、1/14は開館)と年末年始(12/27~1/4)。
観覧料は、一般1100円、大高生は880円。
あわせて、「MOMASコレクション」(1階展示室)も観ることができます。
埼玉県立近代美術館は「MOMAS(モマス)」って呼ぶんですね。
へんてこな響きで面白いです。「MOMA」と同じく、思わず声に出して読みたくなります。
辰野登恵子(たつの とえこ)さんとは。
1950年長野県岡谷市生まれ。
東京藝術大学に学び、1970年代にドット(点)やグリッド(格子)、ストライプなどの規則的なパターンを用いて、理知的で抑制された表現の版画を発表し、若くして注目を集める。
ほどなく制作の中心を油彩に移し、豊潤な色彩で有機的な形象を描く独自の抽象表現を追求、2014年(64歳)に亡くなるまで、自らの絵画を深化させつづけた。(引用:「辰野登恵子オン・ペーパーズ」リーフレットより)
油彩が高く評価されていたそうなのですが、この展覧会では版画やドローイングなど、紙の上の表現をメインに展示したとのこと。
感想。
自由な模索感に励まされました。
シルクスクリーンにリトグラフ、水彩、油彩、パステルなどなど、ごった煮な展示内容でした。
油彩が特に評価されている中での、気分転換だったのか、ライフワークだったのか、幅を広げたり勉強のためだったのかは分からないですが、
この「自由に模索している」感じに励まされました。
やっぱりみんな色々試してみるんだなあ、「1つの技法だけを磨き続けたほうがいいのかな」なんてこだわらず、自由にやっちゃえばいいんだなあ、という。
下絵と本番の違いがほとんどない。
一部、下絵と本番の絵が並んで展示されていたのですが、その違いが紙の汚れやしわくちゃ具合程度だったのも面白かったです。
下絵を「完成作」と言われても信じちゃいます。そんな微差。
直筆のサインや下絵が見れて満足。
美術館・博物館で作品の展示を見る際、作者の直筆サインや下絵を見るとすごくときめく私。
完成した作品自体よりも、作者の「素」や「生きてる(生きてた)実在感」が見える気がして、なんだかほっこりするんです。
今回の展示でも、数点に日付とサインが鉛筆でさらりと入っていて、辰野さんご本人を感じました。ほっこり。
一番好きなポイントは「多くを語っていない」ところ。
中でも好きなポイントは、展示されている作品の99%が、無題か通し番号だけ、というあっさりさでした。
各作品に対する想いについてのコメントがないのもまた素敵です。
分野が違うながらも、同じく絵を描いている身としては、「作品について思い入れを語りたい!」というよりも「なにか語ったほうが良いのかな…」と、ひねり出そうとするときがあるので、これからは辰野さんのように、気にせずシンプルにいこうと思います。
「MOMASコレクション」も見ました。
「MOMASコレクション」では、いろんな画家の作品が見られます。
手書きの文字やスケッチを見るのが好きな私の個人的ツボは、小茂田青樹さんの手書きの手紙と写生帖でした。
「手紙の内容」とか「何のスケッチか」というのは覚えてないくらい、素の文字の並びやゆるい線を眺めていました。
ほかには、モネの積み藁の絵が印象的でした。沈む夕日の逆光を浴びている積み藁なのですが、光の描き方がとても綺麗で、夕暮れの「綺麗なんだけどちょっと寂しく思う」あの感じをじんわりと思い出しました。
まとめ。
辰野登恵子さんを知らぬまま、飛び込みで見に行った展示だったのですが、先日東京国立近代美術館で見た「インゲヤード・ローマン展」と同じく、作品や作者の考え方がシンプルだったのが印象的でした。
そしてやっぱり、他の誰かの作品を見るって大事ですね。励ましや元気をもらえます。
埼玉県立近代美術館|The Museum of Modern Art, Saitama