老後のお金は年金とは別に2000万は必要だ、という金融庁の発表が話題になっている中、タイトルに惹かれてよんだ小説「老後の資金がありません」。
2015年発行の小説ですが、2019年の今読んでも、とてもタイムリーかつリアルな内容で面白かったです。
50代夫婦と一男一女の4人家族。リアルなお金の物語。
主人公は50代の主婦、篤子(あつこ)。平日はパート勤めをしています。
家族構成は、同じく50代のサラリーマンの夫と、20代の頼りない娘、新卒のしっかり者息子という、平凡な4人家族です。
お金問題と人間関係のしがらみで追い詰められていく。
リストラや葬式、娘の結婚、姑との同居など、次々にお金と人間関係のしがらみ問題が起こっていって、ジワジワと老後のための貯金が切り崩されていく展開に、こちらまで胃がキリキリしていきます。
1200万円あった貯金は、さやかの結婚で500万円、そして舅の葬儀と墓で400万円を使い、今や残りは300万円を切ってしまった。夫が定年したあと、どうやって暮らせばいいのか。50代の主婦で、それだけしか貯金のない人って、日本人の何割くらいいるのだろう。ついさっきのガレットの店で払った代金がもったいなく思えてくる。
家計の苦しさを理解せず、妻を打ち出の小槌か何かだと思っている見栄っ張りな夫や、お金に余裕がないのにも関わらず、姑舅を高級ケアマンションに入れ、主人公一家から毎月9万円の仕送りを要求する夫の妹など、イライラポイントがたくさん散りばめられています。
【読書メモ】ぐっときた部分。
ーー篤子ちゃん、ごめん、ちょびっと言い過ぎたかもしれん。
「そんなことないよ」
心にもない言葉がすらりと出る。
若い頃と違って、その場しのぎの言葉で取り繕うことができるようになった。だが、寛容を装うのがうまくなっただけで、心の中は年齢とともにどんどん狭量になっている。
感想。
身内や親戚など、人間関係のしがらみによって、出したくない相手や出したくないタイミングで大金を出さなきゃいけないモヤモヤ感にかなり共感しました。
夫の妹や、娘の結婚相手の親など、文句を言いたいけど立場が微妙だから強く出られない、というパターンって、ものすごくあるあるで、すごくストレスが溜まるんですよね。
そんな胃が痛くなる展開がたくさんありましたが、読後感が良く、面白い小説でした。
小説内にメルカリが出てきて、それを50代の主婦たちが話しているというのも、リアルさが増して印象的でした。