みにまるなひげ

引っ越しの多いミニマリスト漫画家「ひげ羽扇」のブログ。


【読書】「5000日後の世界」GAFAがトップの座から消えていく、テクノロジーの未来予測【メモと感想】

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2021年発行の新書「5000日後の世界」(ケヴィン・ケリー著/インタビュー・編 大野和基/服部桂 訳/PHP新書)を読みました。

5000日=約13年。

インターネットが商用化されて5000日後、ソーシャルメディアと初代iPhoneが生まれ、その5000日後が現在です。

本書は、今から5000日後のテクノロジーの未来はどうなるのか、著者の予測をまとめた一冊となっています。

著者はインターネット黎明期から雑誌「WIRED」創刊編集長を務めたケヴィン・ケリー氏。ビルゲイツやジョブズ、ベゾスなど伝説的起業家たちを取材してきた編集者・著述家です。

約40年間、シリコンバレーで多くの企業の盛衰を見てきた経験から、GAFAなど巨大企業による「勝者総取り現象」や、すべて無料化するフリーミアム経済の到来など、テクノロジーに関する予測を数多く的中させています。

これからの5000日は、いままでの5000日よりもっと大きな変化が起こる」と語る著者。その多くは物理的変化でなく、人間同士の関係性や余暇の過ごし方、人生観などを変えてくものである、とのこと。

グッときた部分の読書メモと感想をまとめました。

「5000日後の世界」の構成。

第1章〜4章|ミラーワールド中心に、AI進化、GAFA後の世界、食、交通手段、お金、エネルギー、教育など、新たなテクノロジーにより到来する未来図。

第5〜6章|こうした未来予測の根幹である著者の思考法について。

新たな巨大プラットフォームの勝者はGAFAではない。

・5000日後の世界は、バーチャルな世界「ミラーワールド」で100万人単位の人々が一つのプロジェクトで同時に働くという世界。

・SNSに続く、新たな巨大プラットフォーム「ミラーワールド」の勝者は、今はまだ無名のスタートアップ企業になる、と予測。(4、5ページ)

・長期的にはミラーワールドは毎月定額を払うサブスクリプション・モデルになることが考えられる

・こうしたAR世界では、勝者はGAFAのどれでもない。

・テクノロジーの歴史では、ある分野で支配的だった者が次の時代のプラットフォームとしてそのまま残ることはなかった

・しかし資本主義である限り勝者総取りの法則は続く(35〜37ページ)


約22万円程度のスマートグラスを買えば、すでに動き出しているミラーワールドのデモが見れるのだそうです。

今後25年のうちに一般人も使える実用的なスマートグラスが登場する。

・今後10年ほどでオフィス以外の仕事現場(機械修理、工場、工業デザインなど)で使えるグラスが登場。

・そしてオフィスや学校でも活用されるようになり、

・今後25年のうちに、より実用的なグラスが出て、一般人も使えるようになる。(38、39ページ)

GAFA後の世界。

・アマゾン創業者ジェフ・ベゾスは「いつかアマゾンは潰れる」と発言した。

・GAFAは25年くらいで代替わりし、今ほどの勢いは無くなってトップの座にはいなくなる。

・ただし、いなくなるのに100年はかかるだろう。(70ページ)


GAFAの中でも「グーグルがいなくなる」理由が一番想像しづらいところ。太陽フレアの影響などでデータが丸ごと吹っ飛ぶ、とかでしょうか。

大会社を規制すると逆に彼らの力を強化してしまう。

近年、巨大テクノロジー企業の独占が問題視されており、今後、規制や制限が強化されそうな状況について。

 

大会社を規制すると結果的に彼らの力を強化してしまいます。(72ページ)

 

その理由は、競合企業が戦えなくなるため。

大会社は規制への対応コストを余裕でかけられるのに対し、小さい会社やスタートアップにはそれが難しい、とのこと。

都市が国家より力を持つ時代が来る。

「これは私の夢かもしれませんが」と前置きした上で、はるか先、「都市が国家より力を持つ時代が来る」と著者は語ります。

2070年には、全世界的に人口が減少し始め、その傾向は毎年続いていきます。
そのため、都市は人口確保を競い合うようになるでしょう。(140ページ)

テクノロジーの上手な選び方。

・それが自分のしたいことに役立つか。
・家族を良くしてくれるか。
・自分のコミュニティーを良くしてくれるか。
・自分を向上させてくれるか。(164、165ページ)

 

著者は長い間スマホも使わずTwitterもやってなかったそうで、ラップトップを持っていない時期もあったのだとか。

それらを使うようになった今でも、ソーシャルメディアはきちんとコントロールできないので使っておらず、スマホはただの電話とグーグル検索専用とのこと。機種は2世代ほど前のもので、アップグレードもしていないそう。

アレクサは使っているものの、家にはまだVRやAR関連機器は置いていないとのこと。その理由は、まだ十分なものがないから。

多くのものを試しはするけれど、その中から使うのは厳選したものだけだと語ります。

新しいものを使ったらどうなるかを事前に十分考え、日常使うには最低限のものだけにしているのだとか。

成功すればするほど、人生の意義が見出せなくなる。

私は、『WIRED』の取材を通じて、シリコンバレーで成功した数多くの起業家に話を聞いてきました。

その結論として、成功すればするほど、人は自分の存在の意義を見出せなくなると感じています。

成功に守られて現実から離れてしまうんですね。(171ページ)

 

例として、著者が若い頃、旅先で出会った年配のツアー旅行者の話が語られています。

そのツアー旅行者たちはお金もあり、ガイドもついていてバス移動。だが、次の予定が決められているため自由な時間が取れない。一方、お金がない著者は、工夫しながら自由行動で旅行していた。

そんな著者を、彼らは羨ましそうに見ていたのだそうです。

 

お金持ちは経験や時間稼ぎと安直さのためにものを買いますが、それが自分を現実から遠ざけてしまうのです。(171ページ)

成功のレベルを上げるには、いったん下げなければならない。

成功者はつい安定と完全さを求めてしまう。そして、貧乏になり、愚かになり、初心者になり、落ちぶれてお金も儲からなくなるという可能性を避けるようになる。

著者自身も、成功体験を重ねるほど、失敗の見込みが高いものに挑戦することが難しくなったといいます。

しかしレベルを上げるには、まずはいったん下げなければいけません。

次のレベルに行くには、いったん谷底まで下りてまた登るのです。しかし、それができません。

しかしこうして下りることは、成功者にとっては成功を否定するものなのでできないのです。(172ページ)

 

ちなみに、ビルゲイツやジェフベゾスはまだ成功の真っ最中なので例外とのこと。

リスクへの恐怖心をなくすには、進んで貧乏な生活をしてみること。

私は若い頃に自分の家を自ら建ててみたので、もしすべてを失い、家が燃えてしまい、株式市場が崩壊して財産がなくなっても、住む家は自分で建てられるという自信がつきました。

寝袋で寝て、豆や米だけで生きるということも経験しました。ですから仕事を失って無一文になるという最悪の事態になっても恐ろしくないし、粗末な食事と寝袋で暮らしても大丈夫という自信があります。

底辺の生活をしたことがあるので、スタートアップですべてを失うという最悪の事態も恐ろしくないのです。

進んで貧乏な生活をしてみると、今後リスクを冒すことへの恐怖心がなくなります。(186ページ)


あとがきによると、著者の自宅は、サンフランシスコ空港から西に12〜13キロほど離れた山麓の、自然に囲まれた場所にあるのだそうです。

「住む家を自力で建て、必要最低限の生活をする」「自然に囲まれた環境で暮らす」という点に、哲学者ソローの名著「森の生活(ウォールデン)」を思い出します。

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考えるためには「書いてみる」こと。

著者が2010年に本を執筆したときのこと。歴史をたくさん調べ、多くの本を読み、人に直接会って話も聞いたものの、一番役立ったのは、実際に書いてみることだったのだそう。

書くことは考えるための方法の一つなんです。

書いてみるまで自分が何を考えているのかがはっきりしませんが、何かを書いてみると、まるで自分がわかっていなかったことに気づくのです。(187ページ)

 

著者がブログをたくさん書いているのは、こうした理由からとのこと。

感想|未来予測以上に、テクノロジーと距離を置く生き方に感化された一冊。

2019〜2021年にかけて行われたインタビューが元になっていることもあり、内容も文章もわかりやすく、スルスル読めました。

専門的・技術的な内容というよりも身近な内容について書かれている、というのも読みやすかったポイントです。

インターネット、SNS、AIなど、テクノロジーが進化するごとに、楽しみ方や便利さが増えていきますが、同時に、大量の情報に流され、スマホに縛られ、自由時間も幸福度も減っているのも事実。ミラーワールドが当たり前になると、ストレスがさらに増えそうです。

本書では、ミラーワールドは監視社会を助長しないのか、本当にその未来は幸福か、については語られていないため、そのあたりの疑問と心配は少し残ります。

未来予測、特にテクノロジーの未来の話が好きなので読んだ一冊なのですが、今回それ以上に印象的だったのは、著者のテクノロジーとの距離感と、どんな状況になっても生活できるという自信でした。

未来がどうなるか知っておくことよりも、何があっても大丈夫な自分であることのほうが安心を感じられる。予測を的中させるよりも、自然の中で生き抜けるほうが心強いだろうと感じます。

テクノロジーの未来以上に生き方に感化された、収穫の一冊でした。

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