みにまるなひげ

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読書メモと感想|「騎士団長殺し」先が気になる面白さ。村上春樹作品ビギナーが一気読みした小説。

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▲第1部はハードカバー、第2部は文庫で読みました。


村上春樹著の小説騎士団長殺し(新潮社)を読みました。

村上春樹さんのインタビューやエッセイ本は何度か読んだことがあるのですが(作家さんのルーティーンや仕事術などを知るのが好きなんです)、小説を最後まで読み切ったことはありませんでした。

初めて挑戦した村上春樹小説は「1Q84」だったのですが、考察が必要そうなその世界観に、だんだんわけがわからなくなってきて、途中でくじけてしまったんです。

今回、第1部だけ借してもらったのを機に、「またくじけるかも」と思いながらなんとなく読み始めた「騎士団長殺し」だったのですが、

離婚を切り出された謎、屋根裏に隠された絵の謎、免色の謎、雑木林の穴の謎…と、次々と気になる謎が出てきて、とにかく先が気になります。

結果、思わず第2部を自分で買ってしまったくらい面白かったです。

私にとって、初めて読み切ることができた村上春樹小説となりました。

グッときた部分の読書メモと感想をまとめます。

「騎士団長殺し」あらすじ。

肖像画家の主人公は、ある日突然、妻から離婚したいと告げられる。

理由がわからぬまま家を出た主人公は、友人の雨田政彦(あまだまさひこ)の好意により、彼の父親であり、著名な日本画家でもある雨田具彦(あまだともひこ)の山荘にしばらく住まわせてもらうことになった。

ひとりきりの山荘暮らしの中、屋根裏に隠された1枚の絵画を見つけたことをきっかけに、主人公の周りで不可解なことが次々と起こりはじめるーー。

【読書メモ】グッときた部分まとめ。

Blessing in disguise(ブレッシング・イン・ディスガイズ)。

「Blessing in disguise(ブレッシング・イン・ディスガイズ)という英語の表現を知っているか?」
「語学は不得意でね」
「偽装した祝福。かたちを変えた祝福。一見不幸そうに見えて実は喜ばしいもの、という言い回しだよ。Blessing in disguise。(中略)」
(第一部 142p)

 
主人公と、友人・雨田政彦(あまだまさひこ)との電話から。

初めて知った言葉なのでメモ。

むしろ誰かを憎むことを恐れたのだ。

それでは免色は、彼女を失ってしまったことを悔やんでいるだろうか? もちろん悔やんではいない。あとになって何かを後悔するようなタイプの人ではないのだ。

自分は家庭生活に適した人間ではないーーそのことは免色にもよくわかっていた。

どれほど愛する相手であれ、他人と日常生活を共にできるわけがない。彼は日々孤独な集中力を必要としたし、その集中力が誰かの存在によって乱されることが我慢できなかった。

誰かと生活を共にしたら、いつかその相手のことを憎むようになるかもしれない。それが親であれ、妻であれ、子供であれ。彼はそのことを何より恐れた。

彼は誰かを愛することを恐れたのではない。むしろ誰かを憎むことを恐れたのだ。 
(第一部 p214)

私のことを語ってるのかと思うくらいに100%共感した部分。

ここだけ読むと、愛のない、かなりドライな人間に思えますが、愛情はちゃんとあります。

それでも彼が彼女を深く愛していたことに変わりはなかった。これまで彼女以上に愛した女性はいなかったし、たぶんこれから先も出てこないだろう。

「私の中には今でも、彼女のためだけの特別な場所があります。とても具体的な場所です。神殿と呼んでもいいかもしれません」と免色は言った。
(第一部 p214)

「ふうけつ」と「かざあな」の違い。 

一般的に人が入り込める大きさを持つ穴を「ふうけつ」、入り込めないような小さな穴を「かざあな」と呼び分けていること。
(第一部 p370)

富士山の風穴について、主人公の叔父が教えてくれた、読み方の違い。はじめて知ったのでメモ。

といっても、この呼び分けは全国共通ではなく、限られた地域や伝聞によるもののようです。

»参考:風穴 - Wikipedia

 イルカは左右の脳を別々に眠らせることができる。 

「イルカは左右の脳を別々に眠らせることができるんだ。知らなかったか?」
(第二部 文庫上巻 p152) 

 知りませんでした。

「半球睡眠」といって、眠りながら泳げるとのこと。イルカのほかに、クジラやカモメ、ペンギンなども半球睡眠ができるそうです。

»参考:第66回 眠りながらも目覚めてる!? 半球睡眠とは何か? | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

ジョージ・オーウェルが「1984」を執筆した島。

「アイラ島といえば、その近くにジュラという小さな島があります。ご存じですか?」
知らないと私は言った。

「人口も少ない、ほとんど何もない島です。人の数よりは鹿の数の方がずっと多い。(中略)そこはジョージ・オーウェルが『1984』を執筆したことでも有名なところです。

オーウェルは文字どおり人里離れたこの島の北端で、小さな貸家に一人で籠もってその本の執筆をしていたのですが、おかげで冬のあいだに身体を壊してしまいました。原始的な設備しかない家だったんです。

彼はきっとそういうスパルタンな環境を必要としていたのでしょう。」
(第二部 文庫上巻 p175)

 

免色が主人公に語った、アイラ島のシングル・モルトウイスキー話の余談から。

「1984年」は、言論や思考の自由のない完全監視社会の恐怖を描いたディストピア小説の名作です。

無意識のうちにいくつかのものごとを棄て、いくつかのものごとを拾い上げることになった。

そしてそれはそのとき私が考えていたよりは、ずっと大事な意味を持つことだったのかもしれない。

私はその途中でーー多くの場合は無意識のうちにーーいくつかのものごとを棄て、いくつかのものごとを拾い上げることになった。

それらの場所を通り過ぎたあとでは、私はそのまえと少しだけ違う人間になっていた。
(第二部 文庫下巻 p360)

主人公が妻から離婚を告げられたあと、山荘暮らしを始める前に旅行した東日本。何も考えられず、無目的のまま旅をした、あのときの意味を振り返る主人公の思考から。

そのときは意味を感じなかったことが、あとになって「転機だった」と気づくことって誰しもありますよね。共感したのでメモ。

【感想】語尾「〜ではあらない」が癖になる可愛さ。

読み終えたあと、思わず第一部の冒頭を読み返してしまいました。いい余韻です。

登場人物のひとりである騎士団長がよく使う語尾「〜ではあらない」が癖になる可愛さで、しばらくは頭から離れなさそうです。ダン・ブラウン著の小説「オリジン」に登場したウィンストン以来の印象的なキャラクターでした。

深く考察しながら読むのは苦手なので、理解しきれてない部分もたくさんあると思うのですが、それでもとても楽しめる良い作品でした。

「1Q84」にくじけた後の数年の間に、スピリチュアルジャンルの本も多く読むようになったので、今回の「騎士団長殺し」がスムーズに読めたんだろうなとも感じます。これを機に「1Q84」に再チャレンジしてみると、今度はすんなり読めるかも。

ですがその前に、本書にも出てきたジョージ・オーウェルの「1984年」を読む予定です。

 

 

 

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