みにまるなひげ

引っ越しの多いミニマリスト漫画家「ひげ羽扇」のブログ。


【読書メモと感想】ニュース断ちで人生の質も幸福度も上がる。「News Diet(ニュースダイエット)」のすすめ。

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2021年(原本は2019年発行)発行のビジネス・自己啓発書「News Diet(ニュース・ダイエット)」(ロルフ・ドベリ著/安原美津 訳/サンマーク出版)を読みました。

書店で見かけた瞬間、その素敵な装丁とシンプルなタイトルに惹かれて手に取った一冊です。著者は「シンク・クリアリー」シリーズのロルフ・ドベリさん。

本書での「ニュース」の定義は、ドキュメンタリーやルポルタージュなど時間をかけて調査したものでなく、最新の出来事を素早く発信する短い記事のこと。

もともとニュース中毒者だった著者が、ニュース断ちを習慣にしてみたところ、「ニュースの消費は時間の無駄」と痛感。(2010年からはまったくニュースなしの生活を送っているそう)

 

ニュースの消費に1万時間も費やしたあとで、私ははじめて自分自身にこんなふたつの質問を投げかけた。

「ニュースのおかげで、私は世界をもっとよく理解できるようになっただろうか?よい決断ができるようになっただろうか?」。

答えはどちらもノーだった。(38ページ)

 

本書では、本人や周囲の実体験と、関連する研究結果をもとに、ニュースのデメリットとニュース断ちのメリットについてまとめられています。

私自身、新聞購読は一度もしたことがなく、2017年秋にテレビを断捨離して以来、ほとんどニュースに触れない生活をしているので、ニュースダイエットのメリットや快適さはたっぷり実感しています。 

さらに見直せる点があるかも、と思い、これまでニュース断ちの復習も兼ねて読んでみました。

以下、「News Diet(ニュースダイエット)」を読んでグッときた部分の読書メモと感想をまとめています。

パンデミックはニュース断ちに影響したか?

この本は、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行する前に多くの言語で刊行された。そのため、「ニュースは断ったほうがいい」という自説に変化があったかどうかを、私は頻繁に尋ねられる。だがその質問の答えは、ノーだ。 

ニュースメディアは私たちになんらかの付加価値を提供することも、まとまった知識や深みのある分析をもたらすこともできないということを、コロナは示してくれたのだから。(9ページ)

価値ある情報の選びかた。 

「ニュース」の対極に位置するのは、長い形式のものーー新聞や雑誌の長文記事、エッセー、特集記事、ルポルタージュ、ドキュメンタリー番組、本などだ。それらの多くが伝える内容は有益で、新しい知識やものごとの背景情報をもたらしてくれる。(44ページ)

 
ただし、主に広告収益で運営されてる媒体で発表されている場合は、情報の重要性より新しさを重視されてる危険性があるので注意、と著者。

 私は、「価値ある長文記事かどうか」を見わけるのに毎回頭を悩まさずにすむように、新聞(紙・電子版ともに)とラジオとテレビを通して伝えられるものは、完全に断つことにしている。(44ページ)

ネガティブなニュースは個人的な心配事を深刻化させる。

ネガティブなテレビニュースは、個人的な心配ごとを深刻化させることが、デイビィ教授によってすでに証明されている。ニュースの内容が心配ごととなんの関係もなくても、この悪影響は変わらない。 (102ページ)

あなたの意見の90%は不要だ。

意見を持たない自由を持とう。自分と関係ないことやどうしようもないことにまで意見を持とうとしないでおこう。と著者はいいます。例えば、
 
・たいして興味がないこと(スポーツ興味ないのにドーピング問題に熱くなるとか)
・基本的に知ることが不可能なこと(来年の夏は気候に恵まれるかどうかとか)
・私たちの脳には複雑すぎる質問(今後20年の間に世界大戦は起きるかどうか。唯一確実なのは、その確率は0より大きく100%より小さいということだけ)
(124、125ページ)

など。

「先月読んだニュースの中で、最も重要度の高かった10件は?」

自分自身にこう問いかけてみよう。「先月読んだニュースのなかで、最も重要度の高かった10件はどれだろう?(現在はもう報じられていないニュースのなかから選んでほしい)」。

ほとんどの人は、重要なニュースを5件も挙げられない。知識として身につかないものを、あなたはなぜ消費する必要があるのだろう?(130ページ)


ちなみに私の場合は「大阪の緊急事態宣言が明けるのはいつか」というニュースしか思いつきませんでした。自分の生活を具体的に左右するニュース以外、脳みそからこぼれ落ちてしまいます。 

ニュース中毒者は集中力が低下し、感情の制御にも苦労する。

メディア消費と脳の関連についての研究によると、複数のメディアを同時に消費する頻度の高い人ほど、前帯状皮質の脳細胞の数は少なくなるとのこと。 (前帯状皮質とは、注意力や倫理的思考、衝動のコントロールなどをつかさどる脳の部位)

 実際、ニュース中毒者にはその影響が見てとれる。集中力が低下し、感情を制御するのにも苦労している様子が見受けられる。 

(中略)あなたがニュースを消費すればするほど、あなたは情報にすばやく目を通せるようになるように、マルチタスクをこなせるようになるように、自分の神経細胞の回路をトレーニングしていることになるのだ。 

しかしそれにともない、深く掘り下げた内容の本を読んだり、深遠な思考をしたりするのに必要な回路は退化してしまう。

私は何度も気づいたことがあるのだが、ニュースを熱心に消費している人の大多数はーーたとえかつては大の読書家だったとしてもーー、長文記事や本を読むことができなくなっている。

4、5ページも読むと疲れてしまい、注意力が落ちてそわそわしだすのだ。(138ページ)


普段テレビ、ラジオ、ネットニュースを断っている私も、一時期うっかりYouTubeでニュース動画を見まくっていたことがあり、読書の集中力が下がってしまったことがありました。

数ページ読んだところでスマホを見たりトイレに立ったりと、集中力が細切れになってしまっていました。そのときは「本との相性が合わないのかな」と思っていたのですが、ニュース消費が一因だったのかもしれません。

脳の構造がもとどおりになるには約1年のニュース断ちが必要。

私の経験から言うと、脳の構造がもとどおりになり、疲れを感じずに長い文章を受け入れられるようになるには、約1年はニュースを断つ必要がある。(139ページ)

うつ病が蔓延しだした時期とニュースが氾濫しだした時期は一致する。 

時間的に考察すれば、うつ病が蔓延しだした時期とニュースが氾濫しだした時期は見事に一致する。(155ページ)

ネットコンテンツの50%以上はフェイク。

世の中にはフェイクニュースも溢れていて、編集者が書いた記事のように見せかけた有料広告も多い、と著者は言います。

すでに「逆転」現象が起きていると推測している研究結果も複数あるーーつまり、インターネットにおけるコンテンツやユーザーやクリックの50パーセント以上は“フェイク”だということだ。(167ページ)

本当に必要なものなら広告がなくても買うはずだ。 

必要のないものや、高くて手の出ないものを私たちに売りつけるのが広告の仕事だ。

本当に必要なものなら、広告がなくても私たちは買っているはずだ。

ニュースと同じくらい、広告は不要だ。 (168ページ)

ニュース以外で専門外の知識を取り入れる方法。 

ひと月に一度、半日時間をとって大きな書店に出かけ、できるだけ多くの分野の新刊に目を通すようにしよう。

(中略)経験上、私がおすすめしたいことはもうひとつある。私は定期的にほかの専門分野の人たちと会うようにしている。(172ページ)

ニュースで報じられていることはいつも同じだ。  

少し離れたところからニュース全体を眺めてみると、報じられていることはいつも同じだ。

スキャンダル、爆弾騒ぎ、俳優についてや発券銀行総裁について、国家元首同士がかわした取り決め、スポーツ選手たちが樹立した新記録、そこここで開かれている企業の記者会見、成長している産業部門と衰退しつつある産業部門、株式市場の上下、どこかで何かに対して怒りをあらわにしている人たち、そしてときどき起こる飛行機の墜落事故。 (173ページ)

くだらないニュースが増えているのは、消費者がそれに夢中だからだ。 

くだらない、価値のないニュースが大量に増えていることについて。

 

増加の理由は、それらのメディアの経営者たちが愚鈍なユーモアを好んでいるからではない。編集者たちが例外なく単純でまぬけだからでもない。ニュースメディアの経営者も編集者も、自分たちが何をしているかはきちんとわかっている。 

彼らががらくたを掲載するのは、消費者ががらくたに夢中だからだ。(178ページ)

 
消費者が相手にしなければ、お金もアクセスも与えなければ、ニュースの質も変わっていきます。

価値があるかどうか判断のつかないものは、価値がない。

価値があるかどうか判断のつかないものはーーそのとおり、価値がないと思って間違いない。(180ページ)


これは断捨離にも通じる考えだったりします。 

メディアは「独自の偏った基準」で報道している。

彼らが伝えるのは、

(a)新しく、
(b)インパクトのある画像が撮れ、
(c)ひとりの人の運命から記事を展開できる惨事

のみだ。 

(中略)ニュースの選別はこの3つの基準にしたがって行われているのであって、世界で起きていることの悲惨さを客観的に評価した結果ではない。

場合によっては阻止できるかもしれない、本当に微妙な段階にあるものがニュースで取り上げられることは、ほぼあり得ないのだ。(185ページ)

 

ニュースを見て同情しても、メディアを稼がせるだけ。同情するなら寄付をすることで行動しよう、と著者。

過去2500年間における哲学者たちが語る「よい人生」の共通点。 

彼らの考えるよい人生には、必ずといっていいほど「内なる平静」がつきものなのだ (194ページ)


その内なる平静を保つのに重要なのはネガティブ感情を取り除くことであり、つまりはニュース断ちが役に立つとのこと。 

ニュースのコメントは、人間の一番醜い部分をあらわにする。

ニュースやニュースのコメントは、人間の一番醜い部分をあらわにする。(195ページ)

賢明さとニュースの消費はまったく調和しない。

賢明さとニュースの消費ーーこのふたつはまったく調和しないのだ。(196ページ)

合理的な人生哲学の2つの基本。

合理的な人生哲学は、必ず次の2点を礎(いしずえ)に成り立っている。

ものごとには自分が影響を及ぼせることと、及ぼせないことがあるということ。そして、自分が影響を及ぼせないことに対して感情を高ぶらせるのは愚かだということだ。(196ページ)

 

ニュースで報じられることの99パーセントは、あなたが影響を及ぼせる範囲外にある。

(中略)あなたのエネルギーは、自分で影響を及ぼせるものに向けたほうがずっと合理的だ。(197ページ)

 「より少ない」ことにこそ豊かさがある。

すでに私たちの頭のなかはいっぱいだ。

新しいものをもっと詰め込むのはやめにして、頭を浄化し、解毒し、いまあるごみを取り除こう。情報を追加するより、削減するほうが得られるものはずっと大きい。

現代では、「より少ない」ことにこそ豊かさがあるのだ。(198ページ)

 ニュースは「底辺への競争」へと向かっている。

この30年で政治的な討論の質が著しく低下したことは誰の目にも明らかだが、ニュースの洪水が激化した時期と、討論の質が劣化した時期とはぴたりと一致する。 (210ページ)

 

ニュースは、ある種の「底辺への競争」へと向かっているのだーー情報はどぎつく、極端に短い形で発信するということを最小の共通分母として。

あなたひとりではこの流れを抑えることも改善することもできないが、競争に加わらないという選択をすることならできる。(211ページ)

その他ざっくりメモ。 

・ニュースは基本的にはなんの役にも立たない。

「あなたの人生に関してよりよい決断を下すのに役立ったニュースは?」と聞かれて、2本以上のニュースをあげられた人はいなかったそう。著者は10年中1本とのこと。ちなみに私はまったく思いつきません。。

・報じられていない出来事のほうが重要度が高いことが多い。

ニュースを知るほど役に立つのなら、所得ピラミッドのトップはニュースジャーナリストで占められるはず、と著者。たしかに…! 

感想。

前著作の「シンク・クリアリー」「シンク・スマート」「シンク・ライト」も以前読んだのですが、そのときにはなかった著者の顔写真が今作では巻末折り返しに載っていました。1966年生まれの55歳。若い!てっきりもっとおじいちゃんだと思っていました。

著者は10年以上ニュース断ちしているとのことですが、著者の奥さんはさらにそれ以前からニュース断ちしているそう。

私自身のニュース断ち歴は3年ほどで、もともと新聞購読はしたことがなく、2017にテレビを断捨離して以来ずっとテレビなし。毎日ネットニュースを見ていた時期もありましたが、パソコンを断捨離して以来、それも見なくなりました。

それでも必要なニュースはちゃんと入ってくるのでまったく問題なしです。

著者の言うとおり、イライラすることが減り、時間の余裕もできるので、それだけでも人生の質が上がります。
 
今回、ニュース断ちすることのメリットの再確認と共感を求めて読んでみたのですが、集中力への影響やストレスに関する研究結果などを知って、ニュース断ちを続ける決意を新たにできました。

また、著者はニュースの代わりに何を読んでいるのか知ることができたのも収穫でした。同じものを購読するわけではなくても、具体例がわかるととても参考になります。

あとやっぱり装丁が大人っぽくクールで洗練されてます。すごく好みです。 

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