みにまるなひげ

引っ越しの多いミニマリスト漫画家「ひげ羽扇」のブログ。


【読書メモと感想】スマホは脳力を下げ、うつの原因になる。「スマホ脳」に学ぶスマホ依存のデメリットと対策。

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2020年発行(原著は2019年発行)の新書「スマホ脳」(アンデシュ・ハンセン著/久山葉子 訳/新潮社)を読みました。

著者はスウェーデン出身の精神科医。2016年刊行の大ベストセラー「一流の頭脳」の著者でもあります。

現在、大人は1日に4時間、10代の若者は4〜5時間をスマホに費やしており、その結果、記憶力や集中力が低下して、ストレス、不安、うつの原因になっているとのこと。

人間の脳はデジタル社会に適応していない」と著者は言います。

そもそも、人類が地球に現れてから99.9%の時間は狩猟と採集をして暮らしてきた人間の脳にとって、今のデジタル世界は非常に異質なのだとか。

本書では、

・デジタル社会についてわかっていること
・心の健康にどんな影響があるのか
・睡眠や集中力への影響
・子供や若者への影響
・学校教育への影響

について、これまでの研究結果をもとに、対策も含めてまとめられています。 

私自身、スマホの見過ぎが心身に良くないのはわかっていつつ、つい毎日YouTubeを何時間も見続けてしまったりするので、スマホのデメリットを改めて叩き込んでもらうことで改善につなげようと読んでみました。

グッときた部分の読書メモと感想をまとめます。

大人の9人に1人が抗うつ剤を服用している。

 

スウェーデンではなんと、大人の9人に1人以上が抗うつ剤を服用しているし、同様の統計が多くの国で見られる。

この増加は、ここ数十年で私たちが裕福になり、GDPが上昇するにつれて起きた。(8ページ)


昔に比べ、物質的に恵まれて良い暮らしになったのに、不安を感じたり不健康になっている人が増加しているとのこと。

スマホ依存の結果、集中力を保てなくなる。

本を読むのは昔から好きだったのに、集中するのが難しくなった。集中力が必要なページにくると、本を脇へやってしまう。そういう経験があるのは私だけではないはずだ。(13ページ)

 

ニュース断ちのメリットについて書かれた本「News Diet(ニュースダイエット)」にも、同様の記述があります。

読書好きの私自身も、読書への集中力の低下を実感しています。

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長期のストレスにさらされると、脳はちゃんと機能しなくなる。

狩猟時代の「ストレス」とは命に関わる短期のストレスでしたが、現在を生きる私たちの「ストレス」は長期のもの。

仕事の締め切りや高額な住宅ローンやSNSのいいねの数など、長期のストレスにさらされてると、脳はちゃんと機能しなくなる。と著者は言います。

 

常に「闘争か逃走か」という局面に立たされていると、闘争と逃走以外のことをすべて放棄してしまうのだ。脳にしてみれば、こういうことだ。

・睡眠ーー後回しにしよう
・消化ーー後回しにしよう
・繁殖行為ーー後回しにしよう
 (45ページ)


長期ストレスによって、イライラしやすくなるし、記憶力も落ちますが、1日や1週間の短期ストレスなら、集中できたり思考を鋭くしたりできるそうです。

動物実験結果によると、むしろストレス機能のスイッチが切れると、無気力になり、何もやる気が起きず、食べることさえやめた個体も。燃え尽き症候群も同じような現象とのこと。ストレス機能が長期で激しく作動した結果故障したとみられます。

 常にストレスシステムがONの状態だと起こる現象。

不安を抱え、常にストレスシステムのスイッチが入った状態だと、身体は絶えず動きたがり、今いる場所から離れようとし、たとえば以下の現象が起きるとのこと。

 

・精神的に落ち着かない
・身体が落ち着かない(貧乏ゆすり、寝てる間の歯ぎしり、首の後ろや背中の筋肉を緊張させ続けて痛くなる、など)
・疲労感
・お腹の不調(消化よりもそれ以外の機能を優先するから)
・吐き気(胃を空にすることで逃げたり闘ったりしようとするから)
・口の乾き(身体が闘いに備えて酸素と栄養を供給するため血液を筋肉に集中させる。唾液腺は血液から水分を取り出して唾液にしてるので、唾液に使える血液が少なくなって乾く)
・汗(逃げよう闘おうとすると身体が温まる。それを冷やそうとして汗をかく)
(58、59ページ)

SNS企業は行動科学や脳科学の専門家を雇っている。

フェイスブックやインスタグラムは、親指マークやハートマークがつくのを保留することがある。そうやって、私たちの報酬系が最高潮に煽られる瞬間を待つのだ。 

(中略)SNSの開発者は、人間の報酬システムを詳しく研究し、脳が不確かな結果を偏愛していることや、どのくらいの頻度が効果的なのかを、ちゃんとわかっている。

(中略)「『いいね』が1個ついたかも?見てみよう」と思うのは、「ポーカーをもう1ゲームだけ、次こそは勝てるはず」と同じメカニズムなのだ。

このような企業の多くは、行動科学や脳科学の専門家を雇っている。(78ページ)

 

自社が開発した製品に後悔している関係者たち。

ジャスティン・ローゼンスタインという30代のアメリカ人は、自分のフェイスブックの利用時間を制限することに決め、スナップチャットのほうはすっぱりやめた。依存性ではヘロインに匹敵するからと言って。

スマホの使用にブレーキをかけるために、本来は保護者が子供のスマホ使用を制限するためのアプリまでインストールした。 

ローゼンスタインの行為が興味深いのは、彼こそがフェイスブックの「いいね」機能を開発した人物だからだ。(78〜80ページ)

  

フェイスブックの元副社長のチャマス・パリハピティヤはあるインタビューで、「SNSが人々に与えた影響を悔いている」と発言した。

「私たちが作り出したのは、短絡的なドーパミンを原動力にした、永遠に続くフィードバックのループだ。それが既存の社会機能を壊してしまった」

フェイスブックで初代CEOを務めたショーン・パーカーも、同社が人間の心の脆弱性を利用したと明言している。(161ページ)

 

iPod やiPhoneの開発に携わったApple社の幹部トニー・ファデルも、同様に後悔しているひとりとのこと。

後悔している関係者が1人2人程度ではなく、しかもCEOや直接の開発者であるところが興味深いです。

スマホ依存症の人の特徴。

「ヘビーユーザー」に多いのは、タイプA[訳註:怒りっぽく、攻撃的なほどの積極性に富み、活動的な性格]の傾向があり、自尊心は低いが競争心が強く、自分を強いストレスにさらしている人たちだった。

おっとりした性格で落ち着いた人生観を持つ人ーータイプBの人たちーーは基本的にそれほどスマホに依存していなかった。(79ページ)

ジョブズとビル・ゲイツの子供たちのデジタル使用時間。

ジョブズも自分の10代の子供がiPadを使って良い時間を厳しく制限していた。ビル・ゲイツは子供が14歳になるまでスマホは持たせなかった。(81、82ページ)

マルチタスクができるのは人口の1〜2%。

基本的に人は複数の作業を同時にこなせない=マルチタスクできない、と著者は言います。

同時にこなしているように見えても、実際は作業から作業へと次々切り替えてるだけ。集中する先を切り替えた後、再び元の作業に100%集中できるまでには何分もかかるのだそう。

 

 しかし、マルチタスクが苦手な人ばかりではない。

現実には、並行して複数の作業をできる人もいる。ほんの一握りながら、「スーパーマルチタスカー」と呼ばれる人々がいるのだ。

このような特質をもつのは、人口の1〜2%だと考えられている。(89ページ)

 
そして、基本的には女性の方がマルチタスクにたけているそうです。

スマホがポケットに入っているだけで集中力が阻害される。

大学生500人の記憶力を調査すると、スマホを教室の外に置いた学生の方が、サイレントモードにしてポケットにしまった学生よりもよい結果が出た。〜ポケットに入っているだけで集中力が阻害されるのだ。(93ページ)

 
同じ現象が他の複数の実験でも見られたとのこと。ポケット中やデスクの上など、手が届く場所にスマホがあるだけで、たとえスマホを触らなくても集中力を奪うのだとか。

脳は「無視する」行為にも知能の容量を割いてしまう。

何かを無視するというのは、脳に働くことを強いる能動的な行為だ。〜無視するために、脳は知能の容量を割かなければいけないのだ。(94、95ページ)


人と食事中、テーブルの上にスマホを置いていると、手に取らなかったとしても相手の話をつまらなく感じやすい、という実験にも触れられています。

デジタルメモより紙とペンのほうが理解しやすい。

米国の研究では、学生にTEDトークを視聴させ、一部の学生には紙とペン、残りの学生にはパソコンでノートを取らせた。

すると、紙に書いた学生の方が講義の内容をよく理解していた。必ずしも詳細を多数覚えていたわけではないが、トークの趣旨をよりよく理解できていた。

(中略)これがどういう理由によるものなのかは正確にはわからないが、パソコンでノートを取ると、聴いた言葉をそのまま入力するだけになるからかもしれない、と研究者は推測する。

ペンだとキーボードほど速く書けないため、何をメモするか優先順位をつけることになる。つまり、手書きの場合はいったん情報を処理する必要があり、内容を吸収しやすくなるのだ。(98ページ)

 

 私自身、この「スマホ脳」含め、ここ2年分くらいの読書メモはスマホのメモアプリに書きためていました。

デジタルメモは速く大量に言葉を打ち込めるので便利ではあるのですが、紙とペンで書いていたころのほうが、メモの内容がより凝縮されていてシンプルにまとまっていたと感じます。

睡眠は脳の老廃物を除去する時間。

睡眠時には、昼間壊れたタンパク質が老廃物として脳から除去される。

この老廃物は1日に何グラムにもなり、1年間で脳と同じ重さの「ゴミ」が捨てられることになる。

(中略)長期にわたる睡眠不足は、脳卒中や認知症をはじめ様々な病気のリスクを高める。それは「清掃システム」がちゃんと機能していないせいだと考えられている。(119ページ)

1時間昼寝をした結果。 

ある調査では、学生に迷路の解き方を覚えさせた。その後、一部の学生は1時間昼寝をし、残りの学生は起きていた。

5時間後、その迷路の解き方をどれくらい覚えているかを調べると、起きていて迷路のことをずっと考えていられた学生たちよりも、しばらく眠った学生たちの方がよく覚えていたのだ。(120ページ)

 

たった1時間の昼寝でも記憶力に良い効果があるというのはうれしい驚きです。  

どうしても寝室でスマホを見たいなら。

世界的に有名な病院が、スマホが脳のメラトニン合成に与える影響を徹底的に調べた結果の忠告が以下。

 どうしても寝室にスマホを持ち込みたいなら、寝る前には画面を暗くして、目から最低36センチは離して見る。そうすれば、メラトニン合成はそれほど妨げられない。(126ページ)

夜遅くにスマホを使うと太りやすくなる。

夜遅くスマホを使うと食欲が増進する可能性があることを知っておいたほうがいいだろう。

ブルーライトの影響を受けるのは睡眠を促すメラトニンだけではない。ストレスホルモンのコルチゾールと空腹ホルモンのグレリンの量も増やすのだ。

グレリンは食欲を増進させるだけでなく、身体に脂肪を貯めやすくもする。(125ページ)

「見るだけ」のSNSユーザーはうつになりやすい。

他人の写真を見るだけで、自分は写真をアップしないし議論にも参加しない消極的なユーザーは、積極的なユーザーよりも精神状態が悪くなりやすいようだ。

(中略)実はフェイスブック上のアクティビティで積極的なコミュニケーションはわずか9%だ。(147ページ)

 
大多数のユーザーは人の投稿を見ているだけか、個人ブランドを構築するためのプラットフォームとして使っているそうです。

9%というのは想像以上の少なさです。 

実生活での対人関係とSNSとの関連性。

それ以外の場所で他の人からしっかり支えられている人は、SNSを社交生活をさらに引き立てる手段、友人や知人と連絡を保つための手段として利用している。そうした人たちの多くは、良い影響を受ける。

対して、社交生活の“代わり“にSNSを利用する人たちは、精神状態を悪くする。(148ページ)

「他人なんかどうでもいい」ナルシスト世代。

1万4000人に及ぶ大学生を調査したところ、80年代から共感力が下がっていた。

特に2種類の能力が悪化している。共感的配慮という、辛い状況の人に共感できる能力。それに対人関係における感受性だ。

これは別の人間の価値観にのっとり、その人の視点で世の中を見る能力だ。

同じ傾向が大学生だけでなく、小学校高学年や中学生にも見られた。私たちは80年代末よりもナルシストになっているようだ。(154ページ)

 
「事故に出くわしたら救助より撮影を優先する」というのもナルシスト世代の特徴のひとつとのこと。

ツイッターの「あえて待たせる」テクニック。

ツイッターにも独自のテクニックがある。

スマホでアプリを立ち上げると、青い画面の中で白い鳥が何度か羽ばたいて、スクリーンを埋め尽くすほど大きくなる。それから突然、ツイートがすべて現れる。

これはログインに時間がかかるわけでも、接続状態が悪いせいでもない。待たせることでスリルを増加させているのだ。

この遅れは、あなたの脳の報酬システムを最大限に煽るよう入念に計算されている。(159ページ)


これ、ずっと「読み込み」のための時間だと思っていました。他のアプリにも、大きくロゴが表示されて少し待たされるものがありますが、あれもあえての「待ち時間」なのかもしれません。 

正確なニュースが拡散されるまでの時間はフェイクニュースの6倍。

SNS上で拡散された10万件以上のニュースを調査したところ、フェイクニュースのほうが多く拡散されていただけでなく、拡散速度も速いことがわかった。

一方で正確なニュースは、フェイクニュースと同程度に拡散されるまで6倍の時間がかかっていた。その理由は、フェイクニュースのほうがセンセーショナルだからだろう。(165ページ)

 

SNSの利用時間を1日30分に減らした実験結果。

150人近くの大学生を2グループに分け、一方にSNSを普段通り使い続けてもらい、もう一方には一日最大30分、1サービスにつき10分までと制限した。

 
3週間後、利用を30分に減らしたグループは精神状態が改善していた。調査開始時にうつ症状のあった人たちは、以前ほど気分の落ち込みや孤独を感じなくなっていた。(167ページ)

 

ちなみに、今回の研究では「無作為に30分と指定しただけ」とのこと。SNSの悪影響を受けないために時間をどのくらい制限すればいいかは正確にはわかっていないそうです。 

スマホやタブレットが子供の脳に与える悪影響。

子供の脳の発達を研究してきた、カロリンスカ医科大学附属病院小児科のヒューゴ・ラーゲルクランツ教授によると。

 彼はタブレット端末が発達を助けるというアイデアには批判的で、むしろ小さい子供の場合は発達が遅れる可能性もあるという。(177ページ)

 
大人にとっては本物のパズルもアプリのパズルも大きな違いはないですが、2歳児は本物のパズルによって指の運動能力を鍛え、形や材質の感覚を身につけていきます。

そのため、アプリだけでは子供の発達に影響が出ると懸念されているとのこと。

パズルだけでなく、文字を「紙とペン」で書くか「アプリ」で書くかも同様だそうです。

 

小児科医の専門誌『Pediatrics(小児科学)』も、普通に遊ぶ代わりにタブレット端末やスマホを長時間使っている子供は、のちのち算数や理論科目を学ぶために必要な運動技能を習得できないと警告している。(178ページ)

1日2時間超のスクリーンタイムはうつのリスクを高める。

16件の研究で合計12万5000人の子供・若者を調査した結果をまとめると、1日2時間を超えるスクリーンタイムはうつのリスクを高めている。

時間が長くなればなるほど、リスクは高まる。(190ページ)

「スマホ脳」対策ざっくりまとめ。 

・【対策】たっぷり睡眠をとること(7〜9時間)
・【対策】勉強と仕事以外のスクリーンタイムは1日2時間まで
・【対策】ストレスや不安にも運動が効く(散歩20分を週3とか、なんなら1日5分でもいい。心拍数が上がる運動だとさらに効果的。集中力が上がり、衝動的行動も減る)(週2時間、たとえば45分3回が脳への効果の理想運動量。できれば息が切れて汗もかくまで運動。それ以上の時間だと身体のコンディションは良くなるが脳にはそれ以上効果があるわけではない)
・うつやイライラはスマホ依存を疑う
・寝室や仕事中の机の上にスマホを置かない
・他者と直接関わる

感想。

わかりやすく、読みやすい1冊でした。

スマホの悪影響(ブルーライトとかSNSとか)は本や動画などで見てなんとなく知ってはいましたが、こうして研究結果による根拠や具体的な対策を知ると、改めて「引き締めよう」と思えます。

News Diet(ニュースダイエット)」の感想にも書きましたが、読書の集中力が続かなくなっているのは本当に同意です。

読書メモもここ2年間ほどデジタルでとっていたのですが、最近紙とペンに戻しました。手書きだと書き込むのも遅くなりますし手も疲れるので、自然とメモ量が凝縮される気がします。

散歩の「20分を週3」というのはクリアできていまして、1日6,000歩を超えてたら「標準」だと思っていたのですが。

本書によると、「祖先は毎日1万4000歩〜1万8000歩歩いていた」ようで。これって、スマホ時間は変えずに歩く量を増やすだけでも、良い変化がありそうな気がします。

デジタルで仕事をしている身としては、「画面を見る時間を1日2時間以内にする」のは難しいですが、YouTubeやSNSなど、「娯楽のために画面を見る時間を1日2時間以内に近づける」のはなんとかなりそうです。

できそうなところからスクリーンタイムを減らしていきます。

「最強脳」の読書メモと感想はこちら。

今回読んだ「スマホ脳」の著者アンデシュ・ハンセン氏による脳力強化法「最強脳」の読書メモと感想はこちらから。

最強脳」も本国スウェーデンですでに大ベストセラーになっており、学校でも積極的に取り入れられているとのこと。

学生向けのわかりやすい文章で書かれているので読みやすい一冊です。

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