みにまるなひげ

引っ越しの多いミニマリスト漫画家「ひげ羽扇」のブログ。


【読書】「ぜんぶ、すてれば」家も車も貯金も持たない伝説の経営者の身軽な生き方【メモと感想】

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2020年4月発行の自己啓発本「ぜんぶ、すてれば」(中野善壽 著/ディスカバー21)を読みました。

著者は70代の実業家。元・寺田倉庫CEO、元・鈴屋代表取締役専務。

ほとんどメディアに出ようとしない異端の経営者は、家も車も貯金も持たない身軽な生き方を貫くミニマリストでもあります。

本書はその身軽でシンプルな生き方がまとめられた一冊です。

すでに持ち物が少ない身軽な人にとっては共感の書であり、自分の中の執着の有無を再確認できる本。

これから身軽になりたい人にとっては、身軽に生きる楽しさと自由、そして豊かさがまっすぐに伝わる一冊です。

個人的に2020年下半期のおすすめ本1位でした。一気読みです。

特に共有したい部分の読書メモと、感想をまとめました。

今すぐやる。

今日できることは、今日のうちやる。今すぐやる。

「何から先にやればいいのか」なんて考えなくていい。

思いついた順に、なんでもすぐやれば、後悔することはありません。(11ページ)

違和感を大事にする。

「自分はそうは思わないんだけどな」

とふと感じた“違和感”を大事にしてほしいと思います。(13ページ)

自分に嘘をついていないか。

何かを気にするよりも大事にすべきなのは、自分に嘘をついていないか。

できることは精一杯やってきたよな?と自分に問いかけて、嘘がなければ、思い切ればいい。(17ページ)

正直にぼーっとする。

大学生の頃就活に身が入らなかった。周りがさっさと内定決めてるのをボーッと眺めてた僕は自分に嘘をつくのは大嫌いだから、

「やりたいことも行きたいところもないなぁ」とだけ考えていました。

でもね、今となっては、正直でよかったと思いますよ。正直にぼーっとしていたことで、思わぬ道が開けたんですから。(19ページ)

会社のために自分を犠牲にしない。

会社は自然界に最初からあったものではなく、人間によってつくられたシステムなのだから、人間が会社に使われるようでは、逆転現象もいいところ。

だから、「会社のため」と身を犠牲にして働くのは、ちょっと変だと僕は思う。(25ページ)

 

著者自身、若い頃徹夜で仕事した時もあったものの、苦痛ではなかったそうです。

なぜなら、頑張っていたのでなく、夢中だったから。自分がやりたくてやっていたから。

大事なのは“やめる勇気”。

始める勇気と同じくらい、大事なのは“やめる勇気”。

じゃあ、どうやって“やめどき”を見極めるかと聞かれたら、「がんばり過ぎている」と気づいた時じゃないかと答えます。

こだわるべきは細部ではなく、大きく自然な流れをつくること。

不自然な力みが生じたり、「どこか自分らしくないな」と感じたとしたら、そろそろやめる時期だと思ったほうがいい。(28、29ページ)

 

「ここまでやったんだから」という蓄積が足かせになって邪魔しているときは、それをずっと引きずった先に未来があるのか考える。とのこと。

直感が自分軸をつくる。

あまりに思い切りよくなんでも捨てる著者。何を捨てて何を残すのか、その選択のセンスの磨き方について。

 

その場で口にする必要はない。

これは好きだな。こっちのやり方は好きじゃないな。

理由は後付けでもいいから、直感で主観を示していく。

最初は勇気がいるかもしれないけれど、それをなんとかつくりあげていかないと、自分の中に主たる軸というものができない。(43ページ)

モノをできるだけ持たないライフスタイル。

僕は捨てる以前に、モノをできるだけ「持たない」ライフスタイルを選んできました。

家は台湾に一応ありますが、賃貸暮らし。家具もごく限られた最小限のものだけで、日本で仕事をするときには、ホテルなどに滞在しています。

クルマもなし。高価な腕時計にも興味はなく、仕事の打ち合わせを時間内で終えるための液晶時計が一つあれば十分です。

日用品も決して高級品ではありません。服は通りすがりのアジア各地でパパッと、いつでも捨てられるくらいの気軽なものを。

食べ物はコンビニの新商品を選ぶのが一番楽しい。ご馳走は会食でいただくだけで満足。

「経営者としての収入を、家財に費やせばそれなりのものが手に入るでしょうに」と不思議がる人も多いのですが、僕はまったくモノに執着がありません。

持たなければ、生活がモノで埋め尽くされないし、土地や家を売買する上での煩雑な手続きもしなくていい。何よりも災害での心配が一つ減る。

何より身軽な生き方が好きなのです。(44、45ページ)

モノの所有は不安が増えるだけ。

ものを所有することは安定を生まない。むしろ不安が増えるだけ。

「いつでも移れる。どこでもすぐに新しい生活を始められる」。

人生の選択肢を広げてくれる、そんな軽やかさを持ちたいと僕は思います。(47ページ)

持ち歩くのは小さな鞄一つでいい。

身軽な生活を始めるに、一番手っ取り早いのは、鞄を小さくすることだ。

僕は飛行機に乗る時も、大きなトランクは持ち歩かない。ハンドキャリーが可能な極小さな鞄を一つだけ。どこに行くにもこれで出かける。

鞄の中に入れるのは、下着と靴下、iPad、家の鍵、眼鏡くらい。

出張先での服は現地で調達する。どうせ一カ所の滞在は長くても3泊4日だから。

あとは携帯電話、小さな財布、薄い手帳、渡航に必要な貴重品を忘れないようにするだけ。

鞄を一つだけと決めて、サイズをコンパクトにするだけで、自然と持ち物は減ります。(51ページ)

人付き合いを捨てる。

僕は、普段連絡を取り合う友人の数は、十人いれば十分だろうと思っています。

付き合いを続けたいのは、明るく未来を語れる仲間。

愚痴や不満を言っているばかりの人とは、自然と疎遠になります。(57ページ)

高め合える関係でなくなったら、離れる。

僕の夫婦観は、「高め合える関係でなくなったら、離れたほうがお互いのため」。(60ページ)

本も捨てる。

身軽な自分をキープするには?

そう聞かれたら、とにかく「捨てること」と答えます。

捨てる、捨てる、惜しげもなく、捨てる。

物理的にモノを捨てるのを習慣にしていたら、心も身軽になってきた。そんな感覚があります。

例えば、読んだ本をコレクションのように本棚に並べるのが好きな人がいますが、僕はまったくの逆。

本は読んだら捨てる(古本屋に売る)。どんなに感動した本でも、とっておくことはしません。

しかしながら、良い本はしばらく経つとまた読みたくなる。そんなときは、また新品を買うのです。

だったらとっておけばいいじゃないか。そう思うかもしれませんが、1回目に読んだときの自分と2回目に読みたくなった自分はまったくの別人です。

ゼロに立ち返って新鮮な気持ちで、フレッシュな学びに出会いたい。そんな態度で、清潔なページをめくる瞬間が心地いいのです。(64ページ)

服はいつでも捨てる。

服だって同じ。だいたい2年持っていればいい方。

僕がファッション業界にいたことを知る人は驚くけれど、5年前の服を着ると、5年前の自分に戻っちゃうみたいで好きじゃない。

そもそも、着るものにこだわり過ぎると不自由になってしまう、というのが僕の価値観です。(66ページ)

情報は最小限しか入れない。

最近は、iPadに入れている「日経電子版」の記事一覧をパッと見て、そこに並ぶ見出しをザーッと眺めるだけで終わり。それでだいたいわかります。(70、71ページ)

「捨てる贅沢」がこれからの新しい価値観。

“捨てる贅沢”こそが、これからの新しい価値になるはずです。(81ページ)

思いついたことは、すぐ声に出す。

仕事でもなんでも、「あ、これを伝えないとな」と思いついたことは、すぐに電話します。

(中略)なぜメールではなく電話で、しかも、時間をおかずにすぐに伝達するのかというと、思いついたときのワクワク感や興奮を冷ましたくないから。

(中略)アイディアは、口に出すのが一番です。それもすぐに。(90、91ページ)

「やりたいか、やりたくないか」で判断する。

向き不向きがよくわからなければ、もっと単純に「やりたいか、やりたくないか」で判断したっていいと思います。

どうも気持ちが向かないのに「あれもこれも、なんとしてでもやらなければ」と、なんでも抱え過ぎていてはいけない。

僕の感覚では、本当に魂を込めた仕事というのは、1週間に1つできればいいほう。

自分で全部やろうとせず、できそうもないことは、より優秀な人たちにやってもらう。こんな発想こそ、必要だと思います。(93ページ)

人に任せて、できたら褒める、できなかったら我慢する。

できたら褒める。できなかったら我慢する。こういう姿勢を貫かないと、人に任せることはいつまで経ってもできないと思います。

すると、仕事を一人でたくさん抱えて、本当にやるべきことができなくなる。

ちゃんと成果を出したいのなら、まかせ上手にならないといけません。(121ページ)

 

ちなみに、自分より100倍仕事が速い人、能力の高い人にお願いしてること前提だそうです。

キャリアもさっぱり捨てる。

著者が台湾に生活の拠点を移して25年以上が経つとのこと。

海外で暮らそうと思ったきっかけは、鈴屋で役員として活動して17年、もう居場所がないなと感じたから。

その時期いろんな誘い話や、裏から情報を聞き取ろうとする電話がひっきりなしで、煩わしく感じていたのも理由のひとつ。

環境も自分が望まない方向に変わっていくように感じ、身を引こうと決めたそうです。

 

決めたら行動は早い。次の日には空港に行って、パッと目に入ったシンガポール行きのチケットを買って、飛行機に乗っていました。

日本におけるキャリアの痕跡を残さず消し去るには、いなくなるのが一番だと思ったから。


この時点ではすっかりシンガポールで暮らすつもりでいたけれど、たまたまその飛行機が台湾経由で、1時間半ほど台北に降り立つことに。

「ここでもいいや」とそのまま入国して、そのまま住み着いちゃった。

サッパリ捨てると、次の世界がどんどん開けてきました。(133ページ)

これからは東方思想が世界を動かす時代。

これからはアジア発の東方思想が世界を動かす時代になるはず。(169ページ)

地産地消の食事が自然。

野菜も米も魚も肉も、自分が住んでいるところの4キロメートル圏内で育ったものだけで完結するのが自然じゃないのかな。(171ページ)

貯金はしない。

貯金は昔からしない主義です。

自分一人が生活するのに必要最低限の現金を残して、あとは寄付とアートの購入に使うだけ。

蓄財したところで、僕が死んだ後の揉めごとを増やすだけです。(180ページ)

 

アート購入は資産としてのコレクションでなく、若手アーティストを応援する目的とのこと。

学生の展覧会にフラッと顔を出し、売るとしたらいくらか聞き、その10倍の値段で買って驚かれたこともあるようです。

アートは好きだけれど、大金をはたくようなことはしないという著者。

コレクションは100万円以下で、「汚れちゃっても構わない」という気軽さで、日用品のインテリアとして買うものが多いそうです。

普段使っているお金は飛行機代、次に洋服代。

普段使っているお金は移動にかかる飛行機代くらい。

次にかかるのが洋服代。これは、行った先々で買うから。(184ページ)

感想:気持ちがいいほど身軽で颯爽。

ぜんぶ、すてれば」。タイトル通り、中で語られる著者の生き方も、とにかくさっぱりしています。気持ちいいほど身軽で爽快です。

さらには文章自体、改行や行間が多く、とても読みやすい構成になっています。

著者の持ちものやプライベートもシンプルですが、働き方についてもシンプルさが貫かれていて、その中でも、

「企画書いらないから、さくっと直接話しかけて提案、即断してすぐ取り掛かってもらう」

「いちいち上司にお伺い立てなくていい」

「稟議書通すなんていう、仕事を始めるための仕事なんて無駄」

「肩書きで呼ばず、シンプルにさん付けが一番」

という考えかたがすごく好きです。

従来のピラミッド型ではない、未来の自由な働き方について書かれた書籍「ティール組織」を思い出しました。

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「持っていたものをゼロにして、もう一回やり直すということを繰り返してきた人生です」

という著者。それでもピンチという感覚はなく、またゼロから始めるのは怖くないと語っています。

私自身、「持ちものが減って丸腰になるにつれて、不安が逆になくなっていく」ことを6年間の断捨離を通じて実感しています。失うものがないくらいのほうが、人生がとても自由になります。

ミニマリストになった今も、時々こうして身軽に生きているかたの本を読んで、共感したり刺激を受けたりしているのですが、今回もかなりワクワクさせられました。

「先のことなんて考えず、とにかく今を楽しむ。今の幸せに目を向ける」。

軽やかに、手放す気持ちが湧いてくる一冊です。

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