西村友作著のビジネス書「キャッシュレス国家 「中国新経済の光と影」」(文春新書)を読みました。
西村さんは中国の首都・北京市の対外経済貿易大学(経済金融系に重点を置いている大学)で教鞭をとっている、日本人経済学者です。
2018年に書かれた本書では、北京在住の著者の実体験も交えつつ、キャッシュレス国家である中国の新経済の現場と、現地のリアルについてまとめられています。
私自身、SuicaやiD、LINE Payなど、最近ではスマホを使った電子マネー決済で買い物をすることが増えました。
それまでは、「現金とクレジットカードで十分でしょ」と思っていたのですが、使い始めると手軽すぎて、すっかりスマホ決済のとりこです。
キャッシュレス普及率で日本の先を行く中国では、個人商店や露店でのスマホ決済は当たり前、さらには現金お断りのお店もあると知って、「本当に財布いらずなんだな」と気になっていたので、興味津々で本書を読みました。
グッときた部分のメモや感想をまとめます。
- 道ばたの露天商でもスマホ決済が可能。
- 国営、公営のモバイル決済対応は遅れている。
- モバイル決済非対応の公園で現金を持っていなかった著者の友人がとった行動。
- 政府が国を挙げてインターネットを活用する社会を目指している。
- 「中国新経済」の特徴のひとつは「内向き」であること。
- 「現金お断り」の業者も現れ始めている。
- 【感想】日本もすぐ追いつくと思うので楽しみです。
- 関連記事はこちら。
道ばたの露天商でもスマホ決済が可能。
ウィーチャットペイのサービス開始が2013年8月。
(中略)2016年頃になると、レストラン、スーパー、コンビニといった通常の販売店だけではなく、道ばたの露天商を含め、スマホで決済できない店を探す方が難しくなった。
街角でギターや二胡などの楽器を演奏したり、歌ったりしてお金を稼いでいる中国人も街でよく見かけるが、「おひねり」を入れる箱のそばには必ずQRコードが貼ってある。
お祭りや夜市の屋台でも電子マネーが使えたらいいな、と思っているので、日本でも当たり前になる日が待ち遠しいです。
国営、公営のモバイル決済対応は遅れている。
本書を執筆している2018年の段階だと、北京でモバイル決済が使えない場所はほとんどないが、(中略)依然として現金払いにしか対応していない場所も一部に存在する。(公立公園のチケット販売窓口や観光地のチケット販売所)
民間と比較して、国営、公営のモバイル決済対応は遅れていると言わざるを得ない。
モバイル決済非対応の公園で現金を持っていなかった著者の友人がとった行動。
現金を持たずにモバイル決済非対応の公立公園へ行ってしまったという、著者の友人のエピソードもつづられています。
その友人は、近くの売店従業員に事情を説明し、その人にウィーチャットペイ(LINE Payのようなもの)で入場料を送金して、同額の現金をもらったとのこと。
友人の対応力もすごいですし、そういうスマホ決済の使い方もあるのか!と目からウロコが落ちました。
政府が国を挙げてインターネットを活用する社会を目指している。
(政府が国を挙げて)経済活動のすべてにおいてインターネットを活用する社会を目指していると言えよう。
(中略)ただし、大まかな方針や発展方向は決めるが、過度な規制をかけない開放的な政策をとっている。私が見るところ、中国政府はイノベーションが生まれやすい環境を整備することに徹しているように思われる。
「中国新経済」の特徴のひとつは「内向き」であること。
本書では、キャッシュレス化が進んだメリットだけでなく、もちろんデメリットや課題も書かれています。
アリババやテンセントの二大プラットフォーマーをはじめ、(中略)中国スタートアップ企業の多くが、これまで驚異的成長を遂げてきた。
しかし、その一因には、「新経済」のベースとなっているインターネットが、閉ざされた世界となっているという面が挙げられる。
中国では、情報監視システムが国家プロジェクトとして構築、運営されている。そのため一部の海外サイトにはアクセスできない。その中には、グーグルやフェイスブック、ツイッターといった世界の著名ITサービスも含まれており、中国進出が制限されている。
これにより中国国内における競争が抑制され、中国の一部のネット企業が恩恵を受けたことは事実だろう。
また、国内には、14億人の巨大マーケットがあるため、サービスの多くが中国人ユーザーのみを意識した設計となっており、短期で訪れている外国人旅行者が利用するにはハードルが高い。
(中略)国内市場がいくら巨大だとはいえ、いずれ限界に達する。その時のためにも国内の外国人対応や海外市場の開拓は不可欠であろう。
「現金お断り」の業者も現れ始めている。
中国では、キャッシュレス決済が普及した結果、現金受け取りを拒否する業者も現れ始めたとのこと。
それに対して、2018年7月に中国人民銀行が、現金の受け取り拒否を禁止する公告を公表し、いきすぎたキャッシュレス化に警鐘を鳴らしている。
【感想】日本もすぐ追いつくと思うので楽しみです。
キャッシュレス化に興味津々な私なので、露店ですらキャッシュレスでOKというくだりにとてもワクワクしました。
PayPayの広まりかたを見ていると、日本でもお祭り屋台で当たり前にキャッシュレス決済できる日も近いな、と感じています。
この調子で役所でもキャッシュレス決済ができるようになるとうれしいところ。
現金に信用のある日本では、まだまだ現金も根強いと思うのですが、それでも最近じわじわとキャッシュレスが広まってきているのをリアルに感じていてウキウキです。
現金を持たなくなって、カードを持たなくなって、そして財布を持たなくなれば、外出時の荷物がさらに軽くなるなあ、と、そちらの意味でもワクワクしています。